日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
原 著
押圧刺激が組織硬度や主観的感覚におよぼす影響
古田 高征
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ジャーナル オープンアクセス

2018 年 43 巻 2 号 p. 73-78

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抄録

【目的】あん摩マッサージ指圧の施術は組織の軟らかさを増すとされている。そこで押圧刺激の前 後における組織硬度・下腿周径の測定、被験者及び施術者の自覚的感覚の評価から刺激の影響を 検討した。
【方法】対象は研究についてインフォームドコンセントを行い同意が得られた健康な成人男性9 名 とした。測定は、施術前後の組織硬度、下腿周径、被験者の自覚的動作感覚、施術者による施術 部位の軟らかさ感とした。組織硬度は筋硬度計を用いて測定し、測定部位は下腿最大周径部を基 準に12 か所とした。下腿周径は、施術前の最大周径部を測定した。被験者の自覚的動作感覚「下 肢の動かしやすさ感」、施術者が感覚する施術部位の「軟らかさ感」は、施術前後を7 段階にて評 価させ記録した。施術は、あん摩マッサージ指圧師有資格者が行い、被験者を腹臥位にて下腿後 側に5 ~ 10kg で快圧相当の強さで1 点圧3 秒、下腿後面に対して5 分間の施術を行った。  統計処理はStatView5.0 を用い、2 元配置分散分析およびFisher's PLSD の多重比較を行い、危険 率5%未満にて有意として施術前後を比較した。またスピアマン順位相関を用いて危険率5%未満 にて相関関係の有意とした。
【結果】施術の前後にて組織硬度は29.5 から26.4、下腿周径は39.5cm から38.9cm に低下がみられ た。被験者の自覚的動作感覚「下肢の動かしやすさ感」は0.7 から-0.4 に低下し下肢の動かしやす さ感が増した。施術者の柔軟感覚「軟らかさ」は0.6 から-1.7 低下し柔軟化がうかがわれた。また 被験者の自覚的動作感覚「下肢の動かしやすさ感」と組織硬度に相関がみられたが、被験者の「下 肢の動かしやすさ感」と施術者による施術部位の「軟らかさ感」には有意な相関がみられなかった。
【考察】組織硬度や下腿周径の低下がみられ、組織の柔軟化や組織液還流の促進が示唆されたと思 われた。また、被験者と施術者の自覚的感覚に相関がみられず、増悪例もみられたことから施術 中に患者の状態を評価把握できる指標の必要性を感じた。
【結語】施術前後の組織硬度、下腿周径に低下する傾向がみられた。組織硬度と被験者の自覚的感 覚の相関がみられた。

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© 2018 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
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