抄録
【はじめに】肩関節周囲炎に対する「鎮痛」と「拘縮改善」の二方向への対策は、患者の主訴と
ADL の両面の改善につながる。鍼通電療法と関節モビライゼーションの併用により疼痛緩和と可
動域制限改善が見られた症例を経験したので報告する。
【症例】60 歳、女性、臨床検査技師〔主訴〕右肩関節の痛み〔現病歴〕初診 X 年 2 月下旬、整形
外科にて肩関節周囲炎の診断を受ける。翌月から就寝時痛が始まり、右肩関節の痛みが増悪傾向
にあったため、5 月に鍼治療を開始〔陽性及び異常所見〕ROM 制限(肩関節外転 60°、屈曲 90°)、
動作時痛(肩関節外旋、外転)、肩甲上腕リズムの崩れ、仰臥位時に右肩甲帯が外転位、VAS(就
寝時痛):70.0㎜〔陰性所見〕静止時痛、神経学的所見〔評価〕患者の病態は、肩関節周囲炎の中
間期へ移行していると判断〔治療〕筋内循環の促進を目的とした鍼通電(主な治療部位:右棘下筋、
右大円筋、右大胸筋鎖骨部線維、僧帽筋肩上部線維)と肩関節拘縮に対する関節モビライゼーショ
ンを実施〔治療に対する評価法〕就寝時痛 VAS、肩関節 ROM(外転、屈曲)をグリッド線撮影ア
プリにより記録。
【結果】2 診目から鍼通電に加え、関節モビライゼーションを開始。3 診目以降 VAS の減少と共に
肩関節の可動域改善がみられ、治療開始後 3 ヶ月目(13 診)では VAS:7.0㎜、ROM:外転 140°、
屈曲 145°、25 診目では VAS: 1.0㎜、ROM:外転 168°、屈曲 161°となった。
【考察】肩関節周囲炎による疼痛の緩和には、痛みの増悪により、関節の運動を制限し、関節包等
の周囲組織の拘縮を生じる「痛みの悪循環」を断ち切る目的での上肢帯全体の関節運動の拡大が
必要となる。また、肩関節周囲組織は結合組織によって構成されるため、拘縮そのものは鍼通電
療法のみでの対応は困難である。そのため、関節モビライゼーションの併用が効果的であり、結
果的に ADL 改善を図ることができると考える。