日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
教育講演
肩関節周囲炎の臨床
- 現状と課題 -
水出 靖
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 46 巻 2 号 p. 17-22

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抄録

 肩関節周囲炎の治療は病変部位、拘縮の有無、疼痛・可動域制限の原因となる軟部組織の状態等に応じて行う。疼痛や可動域制限の要因は freezing phase では腱板や上腕二頭筋長頭腱、腱板疎部等の炎症や筋攣縮が主体である。一方、frozen phase では、炎症の遷延に伴う肩関節周囲の軟部組織の線維化、癒着、瘢痕化といった器質的変化による関節拘縮が可動域制限の要因となる。frozen phase では短期間での機能回復は困難であるので、拘縮のない早期に治療を行うことが肝要である。
 腱板は肩関節周囲炎の主要な病変部位の 1 つである。腱板変性の病因は内因性と外因性に大別される。内因性は腱の血流、コラーゲン含有量・多型性、緊張や硬度、厚さなどの生物学的、機械的、形態学的要因である。外因性は肩峰下面の骨棘、肩峰の形態、肩鎖関節の骨棘、上腕骨や肩甲骨のキネマティクス等インピンジメントを引き起こす解剖学的あるいは生体力学的な因子である。特に外因性のメカニズムのうち肩周辺筋の機能不全の原因となる肩こりや背部痛、これに伴う姿勢異常は日常臨床で肩関節痛のない症例でもしばしば遭遇する。このような症状の軽減を 図ることは肩甲骨や上腕骨の運動を正常化して腱板変性のリスクを減じ、肩関節痛の発症予防に寄与できる可能性がある。

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