抄録
【目的】婦人科がんの手術後に続発する下肢リンパ浮腫に対して日本で行われているあん摩とマッ サージの組み合わせが効果的ではないかと仮説し、治療プロトコルを作成した。そのプロトコル の効果を検討するために n-of-1 試験のデザインで予備研究を行った。
【方法】 対象:子宮体がんの標準治療として子宮および両側卵巣摘出術、骨盤リンパ節・傍大動脈リンパ 節廓清術、化学療法を受けて 14 年を経過した後、右下肢にリンパ浮腫を呈した 70 歳の女性 1 名。 研究デザイン:あん摩治療プロトコル(側臥位で体幹・下肢に遠心性に行う日本で通常行われて いる全身あん摩手技に、血流・リンパ液の還流を意識して伏臥位・仰臥位で下肢に求心性の軽擦 法と筋刺激を組み合わせたもの)による施術を 60 分間、週 1 回、合計 6 回実施する治療期間 1(A1)、それに続く 4 週間の無治療期間 1(B1)、再び治療期間 2(A2)、続いて無治療期間 2(B2) の ABAB デザイン。
評価方法:下肢周径(5 カ所の測定ポイントを設定して合計値を算出)・リンパ浮腫による QOL 評 価(日本語版 LYMQOL を使用)・足背静脈速度測定。
【結果】下肢周径は、A1 の前後では、患側 17.2cm、健側 17.7cm減少した。A2 の 1 回目から 3 回 目までは減少したが、新型コロナワクチン接種後に増加し、その後の施術では患側は不変、健側 1.9cm減少した。B1、B2 の前後ではいずれも増加した。QOL の評価では、下位尺度「全般的な QOL」の改善がみられた。施術前後で測定できた 3 回の足背静脈血流速度はいずれも施術後に上 昇した。
【考察】これらの結果から作成プロトコルはリンパ浮腫の軽減に有用である可能性が考えられた。 あん摩による筋に対する刺激が筋機能の正常化をもたらし、筋内圧の低下と筋血流の増加、静脈 排出の増加を促してリンパ還流に影響した可能性が考えられる。また、静脈上の求心性の施術に よる外的な力によって血液が静脈に流れたことが考えられる。本試験では、統計解析によりプロ トコルの効果を明らかにしていきたい。