抄録
目的:安静時心電図で高電位と判定された男性健診受診者のうち10年後のST-T変化の出現に関わる因子を明らかにするために血圧,脂質,空腹時血糖との関係を調べた.
対象と方法:対象は2000~2001年の安静時心電図で高電位と判定され,2010~2011年にも受診した男性194例(51±7[SD]歳)を,2010~2011年に高電位に加えST-T変化の出現したもの(Ⅰ群,22例),高電位のままのもの(Ⅱ群,83例),他の所見のもの(Ⅲ群,89例)に分け,さらに無作為に抽出した正常範囲心電図のもの(C群,74例,51±7歳)を加えた4群で,血圧,血清脂質,血糖を比較した.心電図判定は,ミネソタ・コード,3-1-1~5,3-3-1~3-4-2を高電位とした.
結果:収縮期血圧は,2000~2001年では,4群間に差はなかったが,2010~2011年ではⅠ群で上昇し,ⅢおよびC群よりも有意に高値であった.血清脂質には10年間で有意な変化はなく,4群間にも差はなかった.血糖値は4群とも10年後には上昇したが,4群間に有意差は認められなかった.高血圧を有するものの割合はⅠ群では2000~2001年ではC群より,2010~2011年ではⅡ群,Ⅲ群およびC群より高かった.
結語:安静時心電図において高電位に加えて高血圧がある場合は,その後ST-T変化を起こしやすく,血圧のコントロールが重要だと考えられる.