抄録
目的:医療マッサージの普及・発展を目的に頸椎症に応用できる頸肩部を対象とした解剖立脚型の標準術式(試案)を提示する。
背景:頸椎症に対する信頼性の高い治療法の情報収集は、診療ガイドラインが刊行されている頸 椎症性脊髄症を除き難しい。マッサージ療法もその例外ではなく、有効性を検証した報告は国内 では見当たらない。無論、首や肩のこり感等の愁訴にマッサージ療法が奏功することは疑う余地 のない事実である。しかし、EBM(Evidence-Based Medicine:根拠に基づく医療)が隆盛の医療 界においてマッサージ療法の価値を発信していくためには、有訴率や有病率の高い愁訴・疾患に ついて質の高い臨床試験によるエビデンスを構築する作業が欠かせない。手技療法界において臨床試験が低調である理由は、医療機関に従事するマッサージ師の数が激減していることの影響もあるが、臨床試験の設計に欠かせないマッサージ療法の標準術式を確立してこなかったことも要因の一つに挙げられるだろう。標準術式とは、誰が施行しても類似の生体反応と治療効果が期待 される施術の方法である。そのような一定の再現性が担保された術式は、誰もが共有できる医学 的な言葉や文章で説明したり、画像で伝えたり、できるものでなければならない。
方法:この認識の下、解剖学に立脚した組織選択的な方法論に基づく標準術式(試案)を作成した。本術式は全症例に施行する「基本術式」と症状に応じて施行する「追加術式」で構成される。 前者は仰臥位で左右同時性に行う点に特徴があり、1頸椎椎間関節のモビライゼーション、2マッサージ施術、3運動療法の3類から成る。術式の核をなす「マッサージ施術」は頸肩部の筋組織 を中心とした 15 工程で構成される。所要時間は約 15 分である。
結語:開発途上の段階であり臨床家諸氏の批判を得ながら改良に努めたい。頸椎症に対する臨床 試験の術式とマッサージ教育改善の一石に資するところがあれば幸いである。