抄録
手技療法である「あん摩マッサージ指圧」の施術において、圧迫法あるいは揉捏法のように、 筋肉そのものにしっかりとした外力を加えることができる手技を受けている際に、「ひびく感覚」 として、実際の圧迫部位・揉捏部位から離れた部位に何らかの感覚が発生する体験をしている方 は確実に存在している。そして、その「ひびく感覚」が施術を受ける者にとって「心地よい」感 覚であったり、痛みの解消に有効であったりする現象であることは確かである。筋・筋膜性疼痛 とトリガーポイントについては、鍼治療の臨床応用に関連した書籍が多くあるが、手技療法にも トリガーポイントの概念は充分に活用ができるものである。
患者の訴えから、責任病態を想像して施術を行う際には、患者の自覚的な愁訴部位と責任部位 の関係性を明らかにしなければならない。考え方の概観としては、1「痛みを訴える部位に問題 点がある」、2「痛みを訴える部位とは別の部位に問題点がある」、3「1と2の混合」となる。 患者の訴える症状部位局所に誘発因子があるか否かを、まず局所解剖の知識を基に、骨格筋を個別に触察して平面で硬結をはじく flat palpation、筋肉をしっかりとつかむ snapping palpation を実行 しながら掘り下げ、局所に問題が無ければ、神経学的診察を行う。結果として、局所・関連する 神経の両者に陽性所見がなければ、トリガーポイントの知識を動員して関連痛の誘発部位を特定する。
関連痛に関する知識は、Janet Travell と David Simons が著した「トリガーポイント・マニュアル 筋膜痛と機能障害」を基に多くの解説本が出版されているので学習は容易である。本稿ではトリガーポイントの概念、具体的な探索法・誘発法と徒手による施術法について紹介を試みる。