日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
特別講演
腰痛・腰下肢症状に対する鍼・鍼通電療法のエビデンス
- 主に神経血流を指標とした検討 -
井上 基浩
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ジャーナル オープンアクセス

2024 年 49 巻 2 号 p. 15-20

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抄録
 腰椎の機能単位は椎体を連結する椎間板、そして左右一対の椎間関節からなる。腰部の退行変性は、一般的には椎間板の変性から始まる。椎間板の変性は、もう一つの支持組織である椎間関節の器質的・機能的破綻を導き、腰椎機能単位の不安定性へと移行する。腰椎の不安定性を回避する目的で骨棘形成等の退行性骨増殖性変化が出現し、再安定化へと進展するが、椎間孔や脊柱管といった神経組織の通過部位が狭小化する。これらの過程で、各種の疾患・症状が出現することとなる。鍼治療は、これらの過程で生じる疾患・症状に対し効果を示すことを臨床的に経験するが、未だその明確なエビデンスが得られているとは言えない。
 本講演では、腰部障害に起因する腰下肢症状に対して、我々が開発してきた鍼治療法の一部について紹介する。それらの治療は、臨床研究の結果、動物を用いた基礎的研究データ、そして、治療によるリスクや患者の受ける感覚等を考慮し、現在では選択順位を定めている。先ずは第一選択の治療として、傍脊柱部刺鍼、障害神経走行部への刺鍼、障害神経の支配筋への刺鍼について紹介する。その後に、第一選択の治療で効果を示さなかった場合の第二・第三選択の治療として、陰部神経鍼通電療法、障害神経根鍼通電療法について紹介する。
 具体的な治療法の紹介と併せて、脊柱管狭窄症に対する傍脊柱部刺鍼、陰部神経鍼通電療法、障害神経根鍼通療法の臨床研究の結果を報告する。そして、これらの治療の効果発現機序に関わる基礎的データに関しても同時に提示し、解説を加える。慢性の坐骨神経痛、神経根症状、そして脊柱管狭窄による間欠跛行は、馬尾を含めた坐骨神経血流の低下が原因の一つとされている。したがって、今回提示する基礎的データは、各治療法による坐骨神経血流の変化を観察し、その反応の機序を調査したものである。これらの臨床研究・基礎研究の詳しい内容は各論文を参照されたい。
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© 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
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