抄録
三叉神経痛に対し三叉神経節高周波熱凝固を施行し,何らかの間欠痛が起こった5例(P群)と間欠痛が起こらなかった5例(N群)を後ろ向きに検討した.三叉神経節高周波熱凝固の電極は,50Hzによる連続刺激で目的とする三叉神経領域に放散痛が得られる部位に位置させた.術中のX線軸位像で矢状面と絶縁針との角度,卵円孔前壁から針先までの距離と卵円孔短軸長の比,側面像で斜台と絶縁針との角度は両群で有意の違いはなかった.側面像で蝶形骨大翼の側頭下面から針先までの距離と斜台までの距離の比は,N群では0.50-0.79の範囲であったのに対し,P群では0.50未満もしくは0.80以上であった.術前を10とした触覚の評価では,術後翌日以降の触覚の残存の程度は,N群に比べP群の方が有意に低かった(6.2±2.7対1.8±4.7,p<0.05).三叉神経節高周波熱凝固後の残存痛は,触覚低下がより強く生じた症例に起こっており,不適切な電極の位置によって生じたことが示唆された.術中のX線側面像での針先の位置と熱凝固後の触覚低下が,三叉神経痛に対する三叉神経節高周波熱凝固の疼痛消失効果の予測指標となる可能性がある.