抄録
開胸手術後(n=132)と開腹手術後(n=295)に0.2%ロピバカインとフェンタニルを使用した硬膜外自己調節鎮痛を行った症例で,手術部位による問題点と副作用の違いを後ろ向きに検討した.開胸手術では硬膜外カテーテルの自然抜去が開腹手術より多く発生し (18%対5%,p=0.001),開腹手術では排尿困難が多かった(25%対8%,p=0.03).悪心・嘔吐,血圧低下の発生頻度に違いはなかった.術後早期にPCAポンプの持続投与量の変更を必要とした理由は,開胸手術では悪心(n=7)と傾眠(n=4)であり,開腹手術では排尿困難(n=13)と血圧低下(n=8)であった.硬膜外自己調節鎮痛では,開胸手術後には硬膜外カテーテルの固定の改善が,開腹手術後では血圧低下と排尿困難に対する対策が必要である.