日本ペインクリニック学会誌
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症例
不随意収縮を合併した開胸術後症候群に対してボツリヌス毒素療法が有効であった1例
小幡 千亜紀小林 俊哉松沢 理恵藤井 宏一渡辺 啓介
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2014 年 21 巻 2 号 p. 115-118

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抄録

開胸術後に生じた痛みと創部の筋の不随意収縮に対し,A型ボツリヌス毒素(botulinum toxin A:BTX-A)が有効であった1例を報告する.症例は66歳の女性.気管支拡張症に対する右肺中葉切除術の2カ月後より創部から前胸部にかけての痛みが増強し,間欠的に繰り返す創周囲の筋の不随意収縮も出現した.他院にてプレガバリンや抗うつ薬の内服,肋間神経ブロック,星状神経節ブロックなどを施行されたが効果はなかった.不随意収縮の緩和目的にBTX-A 100単位を創部周囲の筋に注入したところ,不随意収縮は消失し注入部周囲の痛みも改善した.その後の不随意収縮の再発に対するBTX-A注入により注入部周囲の痛みが完全に消失したため,不随意収縮を伴わない前胸部の筋に対してもBTX-A 100単位を注入したところ,痛みは軽減した.本症例は開胸術後症候群に不随意収縮を併発し,筋弛緩目的で施行したBTX-A注入が有効であったが,同時に痛みも著明に改善した.近年BTX-A注入が神経障害性痛に対し有効であるという報告が散見され,本症例のような難治性の開胸術後神経障害性痛に対する治療選択肢の一つとなりうると考えられた.

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© 2014 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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