日本ペインクリニック学会誌
Online ISSN : 1884-1791
Print ISSN : 1340-4903
ISSN-L : 1340-4903
原著
がんの支持療法や緩和医療における漢方薬治療―低温少量水での漢方エキス顆粒の懸濁時沈殿率について―
松岡 由里子中西 美保
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2019 年 26 巻 4 号 p. 297-302

詳細
抄録

【目的】がんの支持療法や緩和医療では,飲水量が低下しても漢方薬が有効で継続内服を希望する症例を経験する.漢方エキス剤を少量水でも効率よく内服するために,内服直前にあらかじめ懸濁する方法がある.懸濁法では,沈殿率を下げて内服効率を上げることが重要である.現在,漢方エキス剤の懸濁の報告は,室温や高温の水使用に限られるが,食欲不振・嘔気時は,低温の飲食物が摂取しやすい.そこで支持療法や緩和医療で頻用する漢方エキス剤の少量水での懸濁時沈殿率と低温を含む懸濁温度との関連を検討した.【方法】20 mlシリンジ内の0,20,40℃の蒸留水各15 mlに,24種の漢方エキス顆粒剤各0.5包を1種ずつ入れ,各温度で懸濁直後と5分後に各1分間転倒撹拌し,10分後の沈殿量から沈殿率を計算した.【結果】0℃かつ20℃での沈殿率が40℃でのそれより高値を示さない9方剤,またその中に全温度で肉眼的沈殿を認めない1方剤が存在した.【結論】漢方エキス顆粒剤を懸濁する際には,症例や方剤によっては,より安全で簡便な室温水や冷蔵水の使用も考慮すべきである.

著者関連情報
© 2019 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
前の記事 次の記事
feedback
Top