日本ペインクリニック学会誌
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総説
変形性関節症はなぜ痛いのか?
石黒 直樹原田 紀子江端 望藤井 幸一
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キーワード: 変形性関節症, 疼痛, 感作
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2020 年 27 巻 1 号 p. 8-14

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抄録

変形性関節症の痛みについて,患者には「関節軟骨が剥がれて,むき出しになった骨が擦れて痛い」「骨棘がぶつかるから痛い」と説明されることが多いと思われるが,実際はそれ以上に複雑である.もちろん,骨や軟骨,関節周囲の支持組織の構造変化は痛みの原因になり得るが,変形性関節症の痛みには,滑膜炎や軟骨・半月板内側などの無神経野への神経伸長,中枢性/末梢性感作や下行性疼痛抑制系の異常など,さまざまな要素が関連している.これらの要素は,密接にかかわりながらもそれぞれ独自の機能を有するため,独自に異常をきたし得る.つまり,変形性関節症の痛みは,非常に複雑かつ病期や患者個人によって痛みの主因がさまざまであるため,異常をきたしている要素に応じた治療が求められる.超高齢社会を迎えるにあたり,われわれ医療従事者が変形性関節症患者の診療を行う機会はさらに増えていくと思われる.変形性関節症の痛みに対するテーラーメイドの治療を実現するには,まず変形性関節症で起きている変化や痛みの原因について,深く理解することが重要である.

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© 2020 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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