日本ペインクリニック学会誌
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慢性疼痛患者の心理的特徴
MMPI sub-scale を用いて
長谷川 守服部 卓大中 美和子石埼 恵二後藤 文夫
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キーワード: 慢性疼痛, 心理的特徴
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1998 年 5 巻 1 号 p. 30-35

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抄録

慢性疼痛患者の心理的特徴を Minnesota Multiphasic Personality Inventory (MMPI) の major scale のみを用いて調べた研究は多いが, sub-scale を用いた研究は数例しか存在せずわが国では報告例はない. 今回の研究では慢性疼痛患者ではMMPIを用いて得られる personality profile して major scale の scale 1, 2, 3がそれ以外の scale よりも上昇した profile pattern を呈することが多いことに着目して, major scale の scale 2, 3の sub-scale として Harris and Lingoes sub-scale を major scale と一緒に用いて慢性疼痛患者の心理的特徴をより明確化しようと試みた. 対象はDSM-IV診断基準に基づく精神障害のない6カ月以上の疼痛持続期間を有するペインクリニック外来初診患者であり, 初診時にMMPIと, その他の心理検査が施行され心理状態などが評価された. MMPI各 scale 間には項目に重複があるため, MMPI t-score の分析には非直交回転を伴った主成分分析を用い, 固有値1以上の因子を有意とみなし抽出した. 4因子が抽出され因子付加量が有意に上昇した scale に着目し, おのおの Psychological lability (instability), Physical complaints, Social isolation, Social adaptability と命名された. これらの4因子は慢性疼痛患者の痛みの体験がどのような過程にあるのかを評価するのに有用である可能性が示唆され, また sub-scale を用いることで, それらの因子の意味がより明確化され, sub-scale を用いることの有用性も確認された.

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