日本ペインクリニック学会誌
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急性帯状疱疹痛治療中にアシクロビル静注が関与したと思われる肝障害をきたした2症例
廣田 一紀眞鍋 治彦比嘉 和夫檀 健二郎
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1998 年 5 巻 1 号 p. 36-40

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抄録

急性帯状疱疹痛の治療として投与された抗ウイルス薬が原因と思われる肝障害をきたした2例を経験した. これらは, 肝疾患既往のない2例 (44歳, 女性-皮疹部位: 右第7胸神経領域, 57歳, 男性-皮疹部位: 右第3腰神経領域) で, いずれの症例も入院のうえ, 簡易持続注入器による0.5%ブピバカインの連続硬膜外注入 (0.5~0.7ml/時) を含む神経ブロックとアシクロビルの1日1回点滴静注 (500mg/日, 連続5日間) を施行した. 加療により疼痛は急速に低下したが, 治療開始よりそれぞれ22日, 18日目に微熱, 全身倦怠をきたし, 血中好酸球の増多 (12.5%, 15.0%), 肝血清酵素の上昇を認めた. 特に, 1例はすでに治療を終了, 退院9日後に症状の出現をみた. 両症例とも腹部エコーで画像上肝の形態異常は否定され, HA-IgM抗体, HBs抗原, HCV抗体は陰性であった. 安静と肝庇護を行ない, それぞれ4週, 7週後に肝酵素系は正常となった. 発熱, 好酸球増多を伴うことから薬剤過敏性肝障害と考えられたが, これまで周術期の麻酔, 疼痛管理に局所麻酔薬は広く用いられ肝障害の報告がなく, われわれの症例では症状出現後も局所麻酔薬を用い続けた経過より局所麻酔薬による障害は否定的であり, アシクロビル10mg/kgの単回静注連続5日間投与の関与が最も疑われた.

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