日本ペインクリニック学会誌
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癌末期の麻痺性イレウスに対しオクトレオチドか有効であった1例
桜井 康良田口 奈津子田垣内 祐吾山本 達郎西野 卓
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1998 年 5 巻 1 号 p. 41-43

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抄録
症例は48歳の女性. 卵巣癌の術後再発による麻痺性イレウスのために, 嘔気・嘔吐・腹部膨満感を訴えていた. 中心静脈栄養, イレウス管挿入, 高圧酸素療法により改善せず, イレウス管は本人の強い希望で抜去した. 嘔気・嘔吐に対してハロペリドールの持続静注が行なわれたが, 十分な改善が得られないまま, 過度の鎮静状態を呈した. ソマトスタチン同族体であるオクトレオチドの持続皮下注を1日量100μgで開始し, 投与2日目より1日量200μgに増量し, 嘔気・嘔吐の著明な改善が得られた. 投与開始から死亡までの約3カ月半のあいだに, 1回目8日間, 2回目5日間, 3回目7日間にわたり同様に投与して, いずれも有効であった. 投与中止後それぞれ約1カ月は嘔気・嘔吐の改善が得られ, ハロペリドールを中止した. この間合計7回の外泊が可能になるなどQOL (quality of life) の著明な改善が得られた. 副作用は認められなかった. オクトレオチドは末期癌患者のイレウスに伴う嘔気・嘔吐に対して有効である.
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© 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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