日本ペインクリニック学会誌
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二重盲検法による少量ケタミンの術前静注および術後硬膜外投与の術後鎮痛に及ぼす影響
後藤 広人松永 万鶴子檀 健二郎
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キーワード: 術後痛, ケタミン, NMDA受容体
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1998 年 5 巻 2 号 p. 125-133

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抄録

目的: 従来われわれは開腹術において, 術直前からの硬膜外ブロックと術後の持続硬膜外ブロックで求心性入力遮断を行なうことにより術後鎮痛を実施してきた. この方法にケタミンを術前術後に少量加えて中枢感作の抑制も考慮に入れた方法により術後痛にどのような改善効果が現われるか観察した. 対象と方法: 開腹手術を受けた患者43例を二重盲検法により第1群と第2群に分けた. 第1群は術前術後にケタミンを投与したケタミン群 (23例), 第2群は第1群のケタミンと同容量の生食を投与した生食群 (20例) とした. 硬膜外カテーテル挿入後, 両群とも気管内挿管による酸素-笑気併用の全身麻酔を行ない, 挿管直後にケタミン群はケタミン10mg, 生食群は同容量の生食を静注した. 回復室では両群ともブプレノルフィン0.2mg硬膜外投与した後, 0.25%ブピバカイン144ml+ブプレノルフィン0.6mgにケタミン群はケタミン75mgを加えたものを, 生食群はケタミンと同容量の生食を加えたものを3日間持続硬膜外投与した. 術後6, 12, 24, 36, 48, 72時間の安静および体動時の Visual Analogue Scale (VAS), 術後鎮痛剤使用回数, 副作用について観察した. 結果: 安静時および体動時のいずれにおいてもケタミン群は術後痛の程度が軽く推移した. しかも体動時にその効果が著明であった. また, 術後鎮痛剤の使用回数もケタミン群が少なく, ケタミンによると思われる副作用は特に認めなかった. 結論: 術前から術後にかけての局麻薬および局麻薬+ブプレノルフィンを用いた硬膜外ブロックによる求心性入力遮断に加え, 術前術後麻酔作用を起こさない少量ケタミンの投与により術後痛が軽減された. この鎮痛作用は投与量からケタミンの直接麻酔作用というよりNMDA受容体遮断効果による中枢感作の抑制によるものと考えられた.

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