学校心理学研究
Online ISSN : 2432-2865
Print ISSN : 1346-5732
原著論文
Communicating and Meeting with Online Contacts among Female Adolescents: Developing Scales and Exploring Preventive Role of Schools Through Subjective Adjustment
Kaito ABEHaruhisa MIZUNO
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2022 年 21 巻 1 号 p. 21-34

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抄録

本研究は,高校生における学校適応感とネット出会いリスク行動との関連を検討した。先行研究によると,青年がオンライン上で見知らぬ人とコミュニケーションを取るのは,孤立などの心理・社会的な課題,社会的不安,低い自尊感情,気持ちの落ち込みなどが関連している。これは,青年が社会的資源の穴埋めのためにオンライン上でコミュニケーションをとっていると考えられ,これを社会的穴埋め仮説という。本研究は,社会的穴埋め仮説を検証することを目的とした。

オンラインにより調査を実施した。ツイッターを用い調査協力者を募集した。366名の高校生から回答を得た。366名のうち,女性が347名,男性が15名,その他が4名であった。本研究では女性のデータを分析した。3票にデータの欠損が認められたので分析から除外した。344名の高校生女子のデータを分析した。調査項目は出会いリスク尺度,新インターネット依存尺度,青年期の適応尺度,学年,性別,学校外での勉強時間などであった。

出会いリスク行動尺度は,つながり行動,自己露出行動の2つの因子が抽出された。新インターネット依存尺度は,過剰なインターネット利用,インターネット離れの困難の2因子が抽出された。青年期の適応尺度は,居心地の良さの感覚,被信頼・受容感,課題・目的の存在,劣等感の4因子が抽出された。

社会的穴埋め仮説を検討するために,学校適応,学年,学校外での勉強時間を独立変数,出会い系リスク尺度を従属変数とする重回帰分析が検討された。その結果,①課題・目的の存在の程度の低い女子高校生,劣等感の高い女子高校生は,つながり行動が高い可能性があることが明らかになった。次に,②自己露出行動を従属変数とする重回帰分析では,学校適応の下位尺度は,自己露出行動には有意な影響を及ぼしていなかった。学年,学校外での勉強時間の少なさが自己露出行動に影響していた。

この結果から,学校における一次的援助サービスを充実させることで,女子高校生の適応感を向上させ,インターネットにおいて他者とつながる行動を軽減しうる可能性がある。また,女子高校生の進路意識を高めることもインターネットにおいて他者とつながる行動を軽減しうる可能性がある。加えて,学校外での学習時間を高める方向性も,インターネットにおける自己露出行動を低める可能性がある。本研究はこのような示唆を得たが,本研究はSNSであるツイッターによって調査協力者を得たこと,インターネットの出会いリスク行動尺度において回答に偏りが認められたこと,本研究は縦断的な調査ではなく,変数の関連は因果関係ではないことなどの方法論上の課題が認められた。

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© 2022 日本学校心理学会
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