学校心理学研究
Online ISSN : 2432-2865
Print ISSN : 1346-5732
21 巻, 1 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
巻頭言
原著論文
  • 江畑 慎吾
    2022 年 21 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/06/07
    ジャーナル フリー

    本稿では,集団認知行動療法プログラムが中学生の友人に対する感情に及ぼす効果について検討がなされた。中学2年生の2学級(計47名)を対象とし,待機リストコントロールデザインが採用された。生徒は,プログラム実施前,先行群への介入後,待機群への介入後の計3回,中学生用社会的スキルと友人に対する感情を測定する尺度への回答が求められた。プログラムは,「意見の伝え方」と「断り方」をターゲットスキルとした社会的スキルトレーニングと認知再構成法を軸とした心理教育から構成された。そして,介入の結果,両群とも介入直後に社会的スキルの獲得と友人に対する感情に改善が確認された。

  • 西 裕太郎, 石津 憲一郎
    2022 年 21 巻 1 号 p. 11-20
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/06/07
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,担任に対する信頼感が,学級雰囲気を媒介して生徒の学校適応感に及ぼす影響について検討することであった。中学生2,440名を調査協力者に質問紙調査を実施し,2,381名のデータを対象にマルチレベル媒介分析を行った。その結果,個人レベルと学級レベルで,担任に対する信頼感は,直接的に生徒の学校適応感に影響を及ぼしていることが明らかとなった。さらに,個人レベルと学級レベルで,担任に対する信頼感は,学級雰囲気を媒介し,生徒の学校適応感に影響していることも示された。このことから,担任が受容的なはたらきかけを行うなど,生徒が担任を信頼できる接し方や態度をとることで,生徒の学校適応感が高められることや,たとえ担任に対する信頼感が直接的に学校適応感を高めなかったとしても,学級雰囲気を媒介して生徒の学校適応感を高めることが示唆された。

  • Kaito ABE, Haruhisa MIZUNO
    2022 年 21 巻 1 号 p. 21-34
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/06/07
    ジャーナル フリー

    本研究は,高校生における学校適応感とネット出会いリスク行動との関連を検討した。先行研究によると,青年がオンライン上で見知らぬ人とコミュニケーションを取るのは,孤立などの心理・社会的な課題,社会的不安,低い自尊感情,気持ちの落ち込みなどが関連している。これは,青年が社会的資源の穴埋めのためにオンライン上でコミュニケーションをとっていると考えられ,これを社会的穴埋め仮説という。本研究は,社会的穴埋め仮説を検証することを目的とした。

    オンラインにより調査を実施した。ツイッターを用い調査協力者を募集した。366名の高校生から回答を得た。366名のうち,女性が347名,男性が15名,その他が4名であった。本研究では女性のデータを分析した。3票にデータの欠損が認められたので分析から除外した。344名の高校生女子のデータを分析した。調査項目は出会いリスク尺度,新インターネット依存尺度,青年期の適応尺度,学年,性別,学校外での勉強時間などであった。

    出会いリスク行動尺度は,つながり行動,自己露出行動の2つの因子が抽出された。新インターネット依存尺度は,過剰なインターネット利用,インターネット離れの困難の2因子が抽出された。青年期の適応尺度は,居心地の良さの感覚,被信頼・受容感,課題・目的の存在,劣等感の4因子が抽出された。

    社会的穴埋め仮説を検討するために,学校適応,学年,学校外での勉強時間を独立変数,出会い系リスク尺度を従属変数とする重回帰分析が検討された。その結果,①課題・目的の存在の程度の低い女子高校生,劣等感の高い女子高校生は,つながり行動が高い可能性があることが明らかになった。次に,②自己露出行動を従属変数とする重回帰分析では,学校適応の下位尺度は,自己露出行動には有意な影響を及ぼしていなかった。学年,学校外での勉強時間の少なさが自己露出行動に影響していた。

    この結果から,学校における一次的援助サービスを充実させることで,女子高校生の適応感を向上させ,インターネットにおいて他者とつながる行動を軽減しうる可能性がある。また,女子高校生の進路意識を高めることもインターネットにおいて他者とつながる行動を軽減しうる可能性がある。加えて,学校外での学習時間を高める方向性も,インターネットにおける自己露出行動を低める可能性がある。本研究はこのような示唆を得たが,本研究はSNSであるツイッターによって調査協力者を得たこと,インターネットの出会いリスク行動尺度において回答に偏りが認められたこと,本研究は縦断的な調査ではなく,変数の関連は因果関係ではないことなどの方法論上の課題が認められた。

  • 日野 伸子, 高橋 登, 大河内 浩人
    2022 年 21 巻 1 号 p. 35-46
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/06/07
    ジャーナル フリー

    本研究では,小学校で困難さを抱える児童に対して教職員がどのように援助の取り組みを行い,どのような過程を経て援助チームが有効に機能するようになるのかをインタビュー調査をもとに明らかにした。修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチによる分析を行った結果,21個の概念から4つのサブカテゴリーが得られ,「心理的土台づくりのプロセス」と「試行錯誤的から計画的取り組みへのプロセス」という2つの上位カテゴリーにまとめられた。

  • 佐竹 真由子, 小泉 令三
    2022 年 21 巻 1 号 p. 47-60
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/06/07
    ジャーナル フリー

    中学生の不登校未然防止を目的に,社会的能力の向上を目指して,社会性と情動の学習の中のSEL-8Sプログラム(Social and Emotional Learning of 8 Abilities at School)の授業を,導入方法を工夫して全校生徒に対し8か月間で9回実施した。工夫点は,前年度に10日以上欠席した生徒を不登校傾向生徒として注目したこと,SEL-8Sプログラム実施,そして生徒全員の個人カルテ活用のための職員研修会を複数回実施したことである。その結果,不登校傾向生徒の出席率が改善し,心理的な不調傾向に改善の傾向が見られた。

ショートレポート
書評
追悼
feedback
Top