抄録
当科の肝細胞がん肝切除症例の術後短期および長期成績を非高齢者(75歳未満;517例)、高齢者(75~79歳;59例)および超高齢者(80歳以上;24例)にて比較検討したところ、術後合併症発生や術後生存期間は3群間に有意差を認めなかった。術前肝機能は高齢者・超高齢者群が良好であった。これら条件の良い高齢者が手術を順調に乗り越えられても、術後晩期にはFrailty(虚弱)やサルコペニアなどの栄養障害に陥る可能性が高い。肝がん肝切除に限らず高齢者では、すでに栄養障害が存在している可能性があり、正確な栄養評価を行う必要がある。高齢者の術後はADLやQOLを維持するように努めることが重要である。高齢患者では、多職種連携による総合機能評価を個別に術前術後で行い、長期的な栄養管理と運動リハビリテーションを行っていくことが最重要であると考える。