2021 年 57 巻 1 号 p. 1-7
循環器医療や新生児医療の進歩に伴い,先天性心疾患患者の予後が著しく向上したこと,遺伝性不整脈など若年で診断される疾患が増えたこと,母体の高齢化などにより,心血管疾患合併妊娠数が増えている.妊娠・出産を通じて,母体の循環動態はダイナミックに変化するため,合併症リスクが増加する.そのため,妊娠前カウンセリングの時点から,専門家の関与が推奨される.
心血管疾患合併妊娠の診療においては,母体の循環動態の変化とタイミングを知り,合併症の予防や早期診断に努める.また,母体の安全最優先が原則ではあるが,母体の薬物治療における催奇形性や胎児毒性について,放射線検査における胎児被爆や造影剤の児への影響について知り,適切な検査・治療を施行する.わが国における妊産婦死亡の1割が心血管疾患原因であり,ハイリスク例の周産期診療においては,産科,循環器科をはじめ,関連科が連携したチーム医療が必須である.