日本周産期・新生児医学会雑誌
Online ISSN : 2435-4996
Print ISSN : 1348-964X
総説
葉酸による神経管閉鎖障害の予防:発生率,リスク因子,葉酸サプリメントの摂取,行政への要望
近藤 厚生多田 克彦和田 誠司横峯 正人石川 浩史加藤 聖子味村 和哉宮内 彰人佐世 正勝伊藤 知敬師田 信人伊地 俊介
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2021 年 57 巻 1 号 p. 8-18

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抄録

 神経管閉鎖障害は脊髄髄膜瘤と無脳症を包括する病名であり,妊娠6週頃に発症する.この先天異常疾患の特徴は,妊娠前から葉酸を適切に摂取するとその発生リスクを40-80%低減できることである.2000年に厚生省は妊娠を計画する女性は,葉酸サプリメントを1日0.4mg摂取するよう勧告したが,その後の発生率は減少していない.2020年に我々が調査した(推定)真の発生率(2016-18年)は,7.93–8.82/10,000分娩であり,日本産婦人科医会が公表しているデータの約1.5倍であった.本稿では,神経管閉鎖障害と葉酸サプリメントの関連,本疾患のリスク因子,葉酸摂取による利益と有害事象,国際的な予防活動などについて報告する.神経管閉鎖障害の発生率を低減するためには,政府が穀類へ葉酸を添加する法律を制定することが必要であり有効である.

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© 2021 日本周産期・新生児医学会
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