2021 年 57 巻 2 号 p. 334-338
心電図モニタとパルスオキシメータを用いて算出される脈波伝播時間(以下,PWTT)は,非侵襲的な血圧(以下,BP)モニタリングとして有用であることが知られているが,新生児での有効性については明らかでない.本研究は新生児におけるPWTTとBPの関係性について調査することを目的とした.当院NICUに入院し,観血的BP値とPWTT値が安定して測定できた17例を対象とした.PWTT値とBP値の5分おきの差分(⊿PWTTと⊿BP)を算出したところ,⊿PWTTと⊿BPには有意に負の相関を認めた.さらにBP変動を予測するための⊿PWTTの至適なカットオフ値を求めるため,ROC解析を行った.収縮期BPが+10mmHg変動した時のPWTT変化のカットオフ値は-7ms〔Area under the curve(以下,AUC)=0.939,95% CI=0.873-1.0,感度=94%,特異度=91%〕で,-10mmHgで+ 9ms(AUC=0.862,95% CI=0.647-1.0,感度=97%,特異度=75%)であった.本研究から,NICUにおける非侵襲的かつ持続的なBP監視方法として,PWTTが有効であることが示唆された.