2021 年 57 巻 3 号 p. 447-451
羊水塞栓症は心肺虚脱型と産科危機的出血の一原因である子宮型があり,いずれも分娩時に母体血管内へ羊水が流入することで発症するが,子宮型羊水塞栓症は羊水流入の量に関係があるかなど,その病態は明らかになっていない.今回,妊娠,分娩期間中の母体血中SCC値の経時的変化を調べ,羊水中SCC値および分娩前後の血中SCC値を測定することで,羊水の母体血中への流入を推測し,子宮型羊水塞栓症の主症状である分娩時出血量との関連性について検討した.妊娠初期,中期,後期の母体血中SCC値の経時的な変化に有意差は認めなかった.経腟分娩は帝王切開よりも分娩後に母体血中SCC値が上昇しており,母体への羊水流入量が多いことが推定されたが,経腟分娩において,羊水流入量と分娩時出血量に関連は認められなかった.子宮型羊水塞栓症の発症には,アナフィラクトイド反応など,羊水の母体血中への流入量以外に要因があると考えられた.