日本周産期・新生児医学会雑誌
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症例報告
汎下垂体機能低下症合併妊娠に対して計画的陣痛誘発を行い経腟分娩に至った1例
山口 桃李加藤 徹亀井 秀剛上東 真理子竹山 龍田中 宏幸澤井 英明柴原 浩章
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2021 年 57 巻 3 号 p. 516-519

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抄録

 汎下垂体機能低下症合併妊娠は非常に稀であり,分娩方式は帝王切開となることが多い.今回,不妊治療を行い妊娠に至った汎下垂体機能低下症患者に対し計画的陣痛誘発が有効であり,経腟分娩に成功した1例を経験したので報告する.症例は32歳,0妊0産.22歳時に当院脳外科で頭蓋咽頭腫に対する開頭腫瘍摘出術が施行された.術後から汎下垂体機能低下症となり,脳外科と産婦人科でホルモン補充療法を継続的に行った.29歳で結婚し,挙児希望のため排卵誘発目的に不妊治療を開始し,体外受精・胚移植(IVF-ET)で妊娠成立した.ホルモン補充しながら妊娠管理を行い,オキシトシンの分泌不全が想定されたために妊娠39週で計画的陣痛誘発した.陣痛誘発の結果,妊娠39週4日に2,700g(-0.77SD)の女児を経腟分娩した.プロラクチン産生低下のため,産後は人工乳での育児を選択した.汎下垂体機能低下症合併妊娠は,ホルモン補充を行いながらの厳重な妊娠管理が必要となる.分娩方式に関しても検討が必要であり,文献報告も少なく帝王切開を選択することも多いが,今回は計画的陣痛誘発を行うことで経腟分娩に成功した.

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© 2021 日本周産期・新生児医学会
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