2023 年 59 巻 1 号 p. 106-110
先天性両側性横隔膜弛緩症の治療経過中に悪性高熱症を発症し,悪性高熱症の原因遺伝子解析の結果から先天性ミオパチーを合併していると診断した症例を報告する.
症例は,出生直後から呼吸障害を呈し,両側性横隔膜弛緩症と診断して横隔膜縫縮術を施行した.麻酔薬による悪性高熱症を発症したために行った遺伝子解析の結果,1型リアノジン受容体(RYR1)遺伝子のバリアントが同定され,この結果から遺伝学的に先天性ミオパチーと診断した.
先天性横隔膜弛緩症は新生児期の呼吸障害の原因となりうる先天性疾患であり,両側例はまれであるとされる.横隔膜弛緩症と神経筋疾患の合併例は過去にも報告されており,既報からは神経筋疾患を合併する先天性横隔膜弛緩症は両側例が多い可能性が示唆され,両側性横隔膜弛緩症と診断した場合は神経筋疾患の合併を念頭に置いて診療を行うことが望ましいと考える.