日本周産期・新生児医学会雑誌
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症例報告
先天性溶血性貧血を呈した超早産児が発端者となったεγδβサラセミアの1家系
米本 大貴中嶋 美咲慶田 裕美赤石 睦美飯田 浩一
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2023 年 59 巻 1 号 p. 127-131

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抄録

 εγδβサラセミアはβグロビン遺伝子群とその遺伝子調節領域の欠失による稀なサラセミアである.常染色体顕性遺伝形式をとり,一部は胎児期から新生児期に重篤な溶血性貧血を呈するが,貧血は生後数カ月で自然軽快し乳児期以降は軽症βサラセミア様症状となる.

 症例は在胎23週,体重602gで出生した男児.出生時にHb 3.6g/dLの先天性溶血性貧血を認め,入院中に5度の赤血球輸血と未熟児網膜症に対する2度の光凝固術を要した.母とその姉妹に新生児貧血の既往があり乳児期以降はサラセミア様症候群と診断されていた.

 母の遺伝子解析で遺伝子調節領域からβグロビン遺伝子群の一部に欠失を認め,εγδβサラセミアと診断した.

 εγδβサラセミアは先天性貧血の原因となる周産期の重要な遺伝性疾患である.貧血は妊娠中期には始まっている可能性があり,妊娠前の診断と早産予防を含めた慎重な胎児,新生児管理が望まれる.

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© 2023 日本周産期・新生児医学会
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