日本周産期・新生児医学会雑誌
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症例報告
超緊急帝王切開術により子宮内胎児死亡を回避した妊娠性肝内胆汁うっ滞症の1例
宮田 杏衣岩田 亜貴子赤松 千加倉澤 健太郎宮城 悦子
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2023 年 59 巻 2 号 p. 273-276

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抄録

 妊娠性肝内胆汁うっ滞症は総胆汁酸の上昇を特徴とする疾患である.子宮内胎児死亡など重篤な胎児合併症を引き起こす一方で,その管理や娩出時期については定まった見解がない.妊娠性肝内胆汁うっ滞症と診断した妊婦が超緊急帝王切開術を施行し,子宮内胎児死亡を免れた症例を経験したので報告する.

 症例は32歳,2妊0産.妊娠34週より肝逸脱酵素の上昇を認めたため妊娠36週に当院に紹介された.精査で他の肝疾患は否定的であり,総胆汁酸が高値であったことから妊娠性肝内胆汁うっ滞症と診断された.妊娠38週の妊婦健診時に胎児の高度徐脈を認め,超緊急帝王切開術を施行した.術後速やかに総胆汁酸と肝逸脱酵素は改善した.児は新生児仮死の状態で低体温療法を要した.

 超緊急帝王切開術を施行し子宮内胎児死亡を回避できた.本疾患は急速な経過で子宮内胎児死亡に至る可能性があり,その予知は難しい.入院管理や早期娩出を考慮する必要がある.

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© 2023 日本周産期・新生児医学会
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