日本周産期・新生児医学会雑誌
Online ISSN : 2435-4996
Print ISSN : 1348-964X
症例報告
胎児腹水と子宮留水症を伴う後部総排泄腔遺残症に臍帯血栓を合併し子宮内胎児死亡となった一例
長澤 亜希子尾本 暁子廣岡 千草山本 敬介篠原 佳子廣澤 聡子佐藤 美香岡山 潤中田 恵美里甲賀 かをり
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2024 年 60 巻 2 号 p. 304-309

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抄録

 臍帯血栓は周産期予後不良に関連する.今回,腹水を伴った後部総排泄腔遺残症の管理中に臍帯血栓により胎児死亡となった症例を経験したので報告する.母体は妊娠25週の健診で胎児腹水を指摘された.当院初診時超音波で膀胱背側の嚢胞を認め総排泄腔遺残症を疑った.妊娠30週頃より胎児腹水,嚢胞の拡大,羊水過少が徐々に増悪した.胸腔圧排による呼吸障害を予防するため,妊娠34週0日に胎児腹水320mLを除去した.妊娠35週5日の健診で胎児死亡が確認され,妊娠36週0日2,430g女児を死産した.病理解剖で後部総排泄腔遺残症,子宮留水症,肺低形成,片側腎萎縮,食道閉鎖症(Gross C型)を確認,胎盤病理検査で拡張した臍帯血管の血栓が指摘され今回の胎児死亡の主因と考えられた.著明な腹水,子宮留水症に加え羊水過少を伴う総排泄腔遺残症は血栓形成をきたし胎児死亡の可能性があるため,慎重な経過観察が必要である.

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