日本周産期・新生児医学会雑誌
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症例報告
妊娠を契機に診断された未治療のファロー四徴症合併妊娠の一例
柳 絢子岩田 亜貴子赤松 千加近藤 真哉倉澤 健太郎宮城 悦子
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2024 年 60 巻 2 号 p. 310-316

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抄録

 ファロー四徴症(TOF)は大動脈騎乗,右室流出路狭窄,心室中隔欠損,右室肥大を生じる先天性心疾患である.本邦でも修復術後の妊娠出産例の報告はあるが,未治療での報告はない.今回,妊娠を契機に母体TOFと診断され,未治療のまま妊娠を継続,妊娠37週で分娩に至った一例を経験したので報告する.症例は26歳女性,1妊0産,国外で出生した.妊娠初期に心雑音を指摘されTOFと診断された.妊娠継続の希望あり妊娠21週2日に当院へ受診した.Levine分類第III度,NYHA分類I度で,チアノーゼやばち指は認めなかった.心機能を慎重にみつつ妊娠を継続した.妊娠36週3日より右心不全兆候が出現,妊娠37週4日に緊急帝王切開術を施行した.産後1年でTOF修復術を施行した.未治療TOF合併妊娠でも本症例のように正産期まで妊娠継続できる症例もあるが,心不全等の急な状態悪化が生じうるため慎重な対応が必要である.

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