抄録
肺炎後に胸部異常陰影を認めた3歳2か月の男児症例を経験した.気管支造影検査では気管支の異常や偏位を認めず,血管造影検査で下横隔膜動脈より肺に流入する多数の異常動脈があり,肺動脈とシャントを形成していた.肺葉内肺分画症の診断で左下葉切除を行ったが,術後1か月で伸展した上葉の肺動脈と下横隔膜動脈との間にシャントをきたしたため.下横隔膜動脈の結紮術を行った.初回手術時の切除肺には炎症以外に異常を認めず,炎症や胸膜の癒着によって2次的に大動脈系から血管流入(systemic-pulmonary shunt)が生じたものと考えられた.気管支動脈以外にも,大動脈系から肺に血管が流入する病変は多く,肺葉内肺分画症との鑑別にあたっては,気管支造影,選択的動脈造影を含めた血管造影,および病理検査を行い気管支・肺動脈・肺実質の病変を詳細に検討することが重要である.