抄録
症例は2ヶ月男児.生後1ヶ月より哺乳後や啼泣時に呼吸困難が出現し,酸素投与を必要とした.胸部 X-P にて異常陰影を指摘され, CT, MRI にて縦隔腫瘍と診断した.嚢胞性腫瘤は気管分岐部後方に存在し,当初は左主気管支にチェックバルブにより左肺気腫を認めていた.経過中に突然の呼吸困難発作とともに右肺が気腫状となり,左肺は含気低下を呈したが後にもとに復した.右第5肋間における開胸で腫瘤摘出術を施行した.腫瘤は多房性で,透明で非常に粘調な液体を包含する嚢胞で一部の壁には明らかな軟骨を伴い,気管中部左側に強固に癒着していた.経過は良好で,術後15日で退院した.新生児期・乳児期の bronchogenic cyst は,脆弱な気道を圧排し喘鳴や呼吸困難を呈するものもみられるので,術中呼吸管理に特別の配慮を必要とする場合がある.