日本小児外科学会雑誌
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乳児期に肛門周囲膿瘍として発症後も診断および治療に難渋した tailgut cyst の1学童例
金子 道夫大川 治夫岩川 眞由美堀 哲夫池袋 賢一平井 みさ子毛利 健
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1995 年 31 巻 1 号 p. 59-64

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抄録
乳児期に排便排尿障害を来した大きな肛門周囲膿瘍の女児に対し,切開排膿を2回施行した.その後便秘・便失禁が続き,注腸にて仙骨前膿瘍が持続した.患児が11歳の1992年7月に人工肛門を造設後,仙骨会陰式に尾骨合併切除して膿瘍切除,直腸後壁縫合を行なったが,膿瘍は再発した.そこで1993年4月に Soave 原法による直腸切除・pull-through, 第5仙骨合併切除で,膿瘍腔切除を行なったが術後1ヵ月で直腸後壁より粘液の流出が見られ,再再発した.組織標本では重層扁平上皮,移行上皮,腸管の円柱上皮からなる多発嚢胞があり,粘液腺などの分泌腺,平滑筋等が見られ,膿瘍,奇形腫は否定された.これらの所見は tailgut cyst と一致しており初回受診後12年でようやく正しく診断できた. tailgut cyst は成人女性に好発する稀な疾患であるが,正診できていない症例もあり,実際にはかなりの症例があると考えられる.完全切除が行なわれなかった場合にはこの症例の様に再発難治膿瘍となった報告がみられる.
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