1995 年 31 巻 2 号 p. 257-263
2か月女児,左腎原発の Malignant rhabdoid tumor of the kindney (MRTK) 症例を経験した. 原発腫瘍で,光顕では細胞質に特徴的な好酸性の封入体と遍在した核に大きな核小体を認め,発症が2か月であることから MRTK と確定診断した. 腫瘍摘出後,抗腫瘍剤とコバルト照射を併用したが反応せず,発症後2.5か月で再発,11か月で死亡した. 本邦の症例の検討の結果,本症腫瘍が乳児早期,男児に多く,治療に抵抗し予後不良であることが示された. また原発腫瘍,再発腫瘍と再発時腫瘍から樹立した細胞株の細胞骨格蛋白を検討した. この結果,原発腫瘍は神経原性と間葉系の細胞骨格蛋白が陽性,再発腫瘍は間葉系の細胞骨格蛋白が陽性,細胞株は神経原性,間葉系と平滑筋原性の細胞骨格蛋白が陽性であり multiple phenotype を示した. この表現型の結果は,MRTK が多分化能を持つことを示唆した.