1995 年 31 巻 5 号 p. 748-753
初診時の月・年齢が3ヵ月から4歳の軽度ないし中等度の水腎症17例,17腎に対して手術をせずに長期間経過を観察した.観察期間は10年から21年間(平均l1年10ヵ月)であり,follow-up は主として尿検査, IVP および利尿レノグラムにて行った.なお, IVP 上の水腎症の新しい分類法を提唱した.その結果, IVP の所見上 grade が変化した症例はなく,腎実質の菲薄化も認められなかった.利尿レノグラムでは非閉塞型を示した症例が多かったが,境界型や閉塞型を示したものもあり, IVP の所見との乖離がみられた. 軽度の水腎症(われわれの分類のI度とII度)は原則として手術療法は不要であり,中等度(III度)でも手術療法か不要な症例もあると考える.しかし軽度例が増悪したという報告もあるので,手術を行わない症例に対しては長期間にわたる十分な監視が必要である.