1997 年 33 巻 4 号 p. 711-715
原発巣の一期的切除が困難な乳児神経芽腫7例を経験した. 合併症で死亡した1例を除く6例で治療が行われ,多剤併用療法の後に原発巣が切除された. 1例は部分切除と患側腎の合併切除を行い,術後に照射と多剤併用療法を用いたが,腎不全を発症し治療を中止した. 残る5例のうち1例で亜全摘,4例で全摘が行われ,術後は2例で多剤併用療法,3例で James 療法が用いられた. 現在1年3ヵ月から11年を経過し,6例とも腫瘍なしで生存している. 乳児神経芽腫は原発巣が進展していても,生物学的悪性度の低い症例では予後が良好であり,合併症や後障害を残さない治療を考慮すべきである. また INSS (International Neuroblastoma Staging System) の stage 2B や 3 に相当し,N-myc の非増幅症例では,原発巣全摘後の強力な多剤併用療法は必ずしも必要ないと考えられる.