抄録
MRSA腸炎に続発した比較的まれな小児脾膿瘍の1例を経験した.症例は1歳3カ月の男児.発熱, 嘔吐, 下痢を主訴に近医に入院した.抗生剤投与で入院後14日に症状は消失したが, 入院後16日より再度高熱が出現した.腹部超音波検査およびCT検査で脾臓内に多発性膿瘍がみられ脾膿瘍と診断された.抗生剤に反応せず外科的治療を要すると判断され入院後19日に当科に転院した.便培養から同定されたMRSAに感受性のある抗生剤の投与で解熱し, 画像でも膿瘍の縮小消失が確認され, 適切な抗生剤治療と経過観察の結果治癒した.自験例では, 腸炎発症後長期間の絶食による低栄養状態や免疫能低下が関与し, MRSA腸炎からの血行性感染が推測された.