抄録
先天性頸部遺残軟骨は, 出生時よりみられるまれな鰓弓由来の頸部腫瘤であるが, 全身に及ぶ種々の異常を伴うことがあり注意を要する.本症の2例を経験したので報告する.症例1 : 1歳3ヵ月の男児.左胸鎖乳突筋前縁で, 筋の起始部近くの皮下に弾性硬の腫瘤を認め, 摘出術を行った.病理所見で腫瘤は弾性軟骨であった.その他, 外表奇形は認められなかったが, 新生児期にてんかん発作, 無呼吸発作, 口鼻逆流の既往を有した.症例2 : 3歳4ヵ月の男児.左胸鎖乳突筋前縁で, 筋の起始部近くの皮下に腫瘤を認め, 摘出術を行った.病理所見で腫瘤は症例1と同様に弾性軟骨であった.その他, 外表奇形は認められなかった.本症は第1鰓弓および第2鰓弓由来の合併奇形であるが, 他の全身性の異常も考慮し治癒にあたらねばならない.