2003 年 39 巻 2 号 p. 168-173
【目的】小児に見られる臍部の肉芽や分泌物は臍炎を原因とすることが多いが,時として卵黄腸管や尿膜管の遺残が原因となることがある.当科で経験した症例について検討し報告する.【方法】1990年より2001年までの12年間に当科で手術施行した臍病変を伴う卵黄腸管・尿膜管遺残症例を対象とした.【結果】卵黄腸管遺残9例(臍腸瘻3例,臍洞2例,臍腸管嚢胞1例,臍ポリープ3例),尿膜管遺残21例(臍尿瘻3例,尿膜管臍瘻16例,尿膜管嚢胞2例)の計30例を経験した.臍部の局所所見は,臍内の粘膜・肉芽形成5例,瘻孔2例,皮膚の発赤・腫脹7例,臍窩よりの分泌物16例(胎便1例,尿3例)であった.全例に開腹術による根治術を施行した.切除標本の病理学的検査では卵黄腸管遺残金例に腸粘膜上皮が存在し,2例に異所性膵組織を2例に異所性胃粘膜組織を認めた.尿膜管遺残症例の切除組織の内腔には移行上皮あるいは腺上皮が存在した.【結論】卵黄腸管・尿膜管遺残による臍病変は時として臍炎との鑑別診断に難渋することがある.保存的治療に反応しない場合は卵黄腸管・尿膜管遺残の可能性を考え外科的切除術が必要である.