抄録
【目的】術後20年以上経過した3例のlong gapの食道閉鎖症を追跡調査しLivaditis法(以下,本法しの適応と限界について遠隔成績の面から検討した.【方法】1981年6月までに3例のlong gapの食道閉鎖症(Gross A型2例,B型1例)に対しそれぞれ生後6ヵ月,7ヵ月および11ヵ月の手術時に本法を施行した.A型の2例は術前に食道ブジーにより上下食道を延長したのち,上部食道1ヵ所に筋層切開を加え吻合した.B型例の食道盲端間9椎体長は,術前とくに下部食道のブジーを行って,上部食道1ヵ所と下部食道2ヵ所の筋層切開で吻合し得た.上記3例を成人期まで追跡し臨床評価した結果から術式の適応と限界について検討した.【結果】各症例とも術後早期は吻合部狭窄に起因する嚥下困難と気道感染が問題となったが,A型2例の愁訴は3歳までに解消し,以後の身体発育は良好で,患児自身の長期的満足度も良好であった.しかしB型例は食道運動機能不全による愁訴が持続し,19歳で狭窄部食道切除後に経口食のみで体重が維持できるようになった.本症例では思春期に至るまで頻回の入院治療を必要としたことが,身体発育,学業あるいは日常生活に多大の影響を及ぼした.【考察と結論】Gross A型食道閉鎖症の2例は現在,良好な食道機能を有しており,長期経過から見ても本法が良い適応であったと考える.B型の1例は消化管間置法とほぼ同等の食道運動機能不全が問題であり,本法の適応の限界と思われた.本法施行例では生活の質的満足度が得られるよう,種々の面で早期から継続的な支援が必要である.