2005 年 41 巻 2 号 p. 196-199
肛門重複症は消化管重複症の一型と分類されるが, 報告例は稀である.症例は12歳女児で, 生来便秘傾向であったが, 増悪時に浣腸を行なうことで排便をみていた.便秘を主訴に近医小児科を受診した際に肛門部の異常を指摘され, 当院を紹介され受診した.初診時, 正常肛門背側正常皮膚に小孔を認めた.ゾンデが約2cm挿入可能で, 造影では直腸との交通は認めなかった.痔瘻の既往はなく, 重複肛門管の疑いで摘出術を施行した.瘻孔外口は直径約1cm, 深さは2cmで, 肛門括約筋内に存在し, 正常肛門管との交通は認めなかった.病理組織標本でも, 瘻孔内腔は移行上皮と扁平上皮で覆われ, 一部に平滑筋束を伴うものの神経節は認めず, 瘻孔周辺には肛門腺導管が存在したため, 肛門重複症と診断された.本疾患は比較的稀な疾患であるが, 痔瘻との鑑別が問題となる.本邦報告例の集計と若干の文献的考察を加えて報告する.