2006 年 42 巻 1 号 p. 40-44
患児は14歳, 女児.11歳ごろより左耳介下部に腫瘤を認め, 12歳ごろより徐々に増大したため当科受診した.経過中, 発赤, 腫脹, 圧痛等を認めなかった.受診時, 左耳介下部に弾性軟, 可動性, 圧痛なく辺縁明瞭な腫瘤を認めた.皮膚表面には発赤, 腫脹, 瘻孔などの変化を認めなかった.頸部超音波にて嚢胞性腫瘤を認めた.腫瘤の穿刺吸引を施行し黄白色の粘稠な排液を認め, 細胞診にて多数の扁平上皮を認めた.耳介に接する嚢胞性病変であり, 体表との瘻孔を認めないことから, 第一鰓裂性嚢胞と診断した.全身麻酔下に摘出術を施行し, 嚢胞は外耳道に近接していたが明らかな瘻孔を認めなかった.嚢胞深部を外膜の内腔側にて切除を行ったため顔面神経を損傷することなく, 比較的小さい術創となり美容的にも満足いく創となった.摘出標本では嚢胞内壁は異型性の無い重層扁平上皮で覆われ, 軟骨, 汗腺等はみられなかった.第一鰓裂性嚢胞は稀な疾患であるが, 小児の頸部腫瘤に際して重要な鑑別疾患の一つと考えられた.