抄録
【目的】当院で経験した小児外傷性肝損傷症例を検討し文献的考察を加える.【対象・方法】2004年度〜2010年度に外傷性肝損傷にて入院治療を要した症例について,診療録をもとに後方視的に検討した.【結果】対象期間に入院を要した肝損傷症例は8例であり,日本外傷外科学会による分類では被膜下損傷は3例(Ia型1例,Ib型2例),表在性損傷(II)2例,深在性損傷3例(IIIa型1例,IIIb型2例)であった.III型の3例で経皮的肝動脈塞栓術(transcatheter-arterial-embolization,以下TAE)を施行したが,手術症例および死亡例はなく,治療成績は良好であった.【結論】I型II型損傷では保存的治療が極めて有効であったが,III型損傷では高率に止血処置を要した.造影CTで止血処置の適応を決めかねる場合には,血管造影にて出血巣の精査を行い止血処置の適応を早期に決定することも考慮すべきであり,止血処置としてはTAEが有効であった.