日本小児外科学会雑誌
Online ISSN : 2187-4247
Print ISSN : 0288-609X
ISSN-L : 0288-609X
原著
当科における過去10 年間の腸重積症例の検討
高橋 良彰宗崎 良太永田 公二林田 真田口 智章
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 49 巻 4 号 p. 904-908

詳細
抄録

【目的】腸重積症は,乳幼児期に突然に発症する小児腹部救急疾患の代表的疾患である.当科で10 年間に経験した症例を検討したので報告する.
【方法】2001 年1 月より2010 年12 月までに,九州大学小児外科で経験した腸重積症105 例の臨床像について後方視的に検討した.
【結果】男児51 例(49%),女児54 例(51%)で男女比は同等であった.年齢は3 歳未満が83 例(80%)と大多数であった.症状は血便が57 例(54.3%)と最多で,血便・腹痛・嘔吐の3主徴が揃った症例は9 例(8.5%)のみであった.しかし,全例において3 主徴のうちいずれか1つを認めた.器質的疾患は9 例に認め,そのうち悪性疾患を2 例認めた.観血的治療は16 例(15%)に行われ,発症から24 時間以上経過した症例に多く認められた.病型に関しては回腸回腸型は半数以上で観血的治療が必要であったのに対し,回腸-結腸型や結腸-結腸型で観血的治療が必要であった症例は10%以下であった.また,3 歳未満症例と3 歳以上症例と比較すると,器質的疾患を認めた症例,観血的治療となった症例,ともに3 歳以上症例で多く認めた.なお,悪性疾患は悪性リンパ腫の2 例で,2 歳と13 歳であった.
【結論】観血的治療となった症例は発症から24 時間以上経過した症例が多く,早期診断が重要であると考えられた.全腸重積症例の約2%に悪性疾患を認めたため,悪性腫瘍の可能性も考慮した精査が必要であると考えられた.3 歳以上の症例では,3 歳未満の症例と比較して,器質的疾患を有した症例,観血的治療となった症例が多く,何らかの器質的疾患が隠れている可能性を十分考慮した治療を行う必要がある.

著者関連情報
© 2013 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top