日本小児外科学会雑誌
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49 巻, 4 号
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おしらせ
原著
  • ―特に膀胱・膣機能温存の観点から―
    東間 未来, 広部 誠一, 新井 真理, 小森 広嗣, 山本 裕輝, 宇戸 啓一, 大場 豪, 小林 真史, 鎌形 正一郎, 佐藤 裕之
    2013 年 49 巻 4 号 p. 897-903
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2013/06/20
    ジャーナル フリー
    【目的】総排泄腔異常症(以下本症),とくに三管合流部の位置が高位の症例では長期機能予後が悪いことが問題である.当院では機能温存術式として腹仙骨会陰式partial urogenital mobilization(PUM)(以下本術式)を考案したのでこの術式を報告し,その有用性を検討した.
    【方法】当院および当院の前身である清瀬小児病院で根治術を施行した本症20 例のうち,三管合流部がPC 線より高位にある症例7 例について根治術式と術後機能予後を評価し,本術式の有用性を検討した.
    【結果】高位症例の現在の年齢は2~31 歳(平均17.3 歳)であった.根治術式は初期には尿道と膣を切離する術式が行われたが,尿道損傷や尿道膣瘻再開通などの合併症を認め,膣狭窄も高度であった.また,排尿機能が不良で全例が間欠的自己導尿(以下CIC)を長期にわたり行っていた.これに対して尿道と膣を切離しない術式として腸管の後方パッチを施行したところCICを幼児期に離脱することができ,膣狭窄も認めなかった.これはこの術式が膀胱機能を温存した結果であると考え,より簡便な術式として本術式を考案した.本術式適用症例は術後長期成績をだすまでに至っていないが,術後合併症を認めず,排尿機能はおおむね良好であり,膣狭窄も認めていない.
    【結論】本症の高位症例に対する従来の術式では,排便・排尿・膣の機能予後が不良であることが課題であった.本術式によって児が本来有している機能を温存することが期待される.
  • 高橋 良彰, 宗崎 良太, 永田 公二, 林田 真, 田口 智章
    2013 年 49 巻 4 号 p. 904-908
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2013/06/20
    ジャーナル フリー
    【目的】腸重積症は,乳幼児期に突然に発症する小児腹部救急疾患の代表的疾患である.当科で10 年間に経験した症例を検討したので報告する.
    【方法】2001 年1 月より2010 年12 月までに,九州大学小児外科で経験した腸重積症105 例の臨床像について後方視的に検討した.
    【結果】男児51 例(49%),女児54 例(51%)で男女比は同等であった.年齢は3 歳未満が83 例(80%)と大多数であった.症状は血便が57 例(54.3%)と最多で,血便・腹痛・嘔吐の3主徴が揃った症例は9 例(8.5%)のみであった.しかし,全例において3 主徴のうちいずれか1つを認めた.器質的疾患は9 例に認め,そのうち悪性疾患を2 例認めた.観血的治療は16 例(15%)に行われ,発症から24 時間以上経過した症例に多く認められた.病型に関しては回腸回腸型は半数以上で観血的治療が必要であったのに対し,回腸-結腸型や結腸-結腸型で観血的治療が必要であった症例は10%以下であった.また,3 歳未満症例と3 歳以上症例と比較すると,器質的疾患を認めた症例,観血的治療となった症例,ともに3 歳以上症例で多く認めた.なお,悪性疾患は悪性リンパ腫の2 例で,2 歳と13 歳であった.
    【結論】観血的治療となった症例は発症から24 時間以上経過した症例が多く,早期診断が重要であると考えられた.全腸重積症例の約2%に悪性疾患を認めたため,悪性腫瘍の可能性も考慮した精査が必要であると考えられた.3 歳以上の症例では,3 歳未満の症例と比較して,器質的疾患を有した症例,観血的治療となった症例が多く,何らかの器質的疾患が隠れている可能性を十分考慮した治療を行う必要がある.
  • ―第42 回小児外科研究会アンケート調査結果より―
    吉元 和彦, 寺倉 宏嗣, 小山 宏美, 川端 誠一
    2013 年 49 巻 4 号 p. 909-915
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2013/06/20
    ジャーナル フリー
    【目的】九州の小児外科施設における外傷診療の現状について明らかにすることを目的とした.
    【方法】九州地区において小児外科診療を行っている30 施設にアンケートを依頼し,22 施設から有効回答を得た.各質問への回答をもとに小児外傷診療の現状について検討した.
    【結果】小児外科医が小児外傷の初期診療から関わっていると回答した施設は59%(13/22)であった.また外傷チームを設定している施設は2 施設のみであった.過去5 年間の主要な腹部臓器の損傷患者の入院総数は平均で9 人(1.8 人/年)であった.
    【結論】各施設の小児腹部外傷の診療数は少なく1 施設でのデータの蓄積は難しい.今後,小児外傷診療システムを確立するためには,その根拠となるデータを多施設で収集することが必要である.
症例報告
  • 久山 寿子, 嵩原 裕夫, 新居 章, 森 大樹
    2013 年 49 巻 4 号 p. 916-919
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2013/06/20
    ジャーナル フリー
    腸管出血性大腸菌O-157 による出血性大腸炎では,浮腫状に肥厚した腸管が,腸重積症類似の画像所見を呈し,その浮腫腸管を先進部とする腸重積症を続発することがある.今回,我々は初診時に腸重積症と診断され,腹腔鏡下検索を行った後に,O-157 感染が判明した年長児2 例を経験した.症例1:15 歳,男児.注腸造影検査で,造影剤の小腸への流入が不十分で重積腸管が整復されていないと判断した.症例2:6 歳,女児.注腸造影検査で腸重積の再々発を認めたために,腹腔鏡的検索を行った.いずれも盲腸から上行結腸にかけて著しい腸管の浮腫・腫脹及び発赤を認めたが,メッケル憩室,ポリープなどの器質的異常は認められなかった.術後,入院時の便培養結果からO-157 感染と診断され,保存的加療を行った.O-157 大腸炎はまれな疾患ではなく,年長児の腸重積症,あるいは腸重積症類似の所見を見た場合,O-157 感染症の可能性を考え,不要な外科手術を避けるべきである.
  • 棚野 晃秀, 堀澤 稔
    2013 年 49 巻 4 号 p. 920-924
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2013/06/20
    ジャーナル フリー
    正中頸囊胞の再発原因の一つと考えられる異所性粘液囊胞を,病理組織学的に証明し得た1 例を報告する.
    症例は5 歳の男児.2 歳頃から右下顎に,径5 mm 大の腫瘤に気づいていた.数か月前から腫瘤が大きくなり受診した.精査にて異所性の粘液囊胞と診断し,摘出術を予定した.術中に囊胞から粘液の排出を確認し,また囊胞から舌骨正中前面に連続する索状物を認めた.以上より囊胞は甲状舌管につながる異所性粘液囊胞と判断し,囊胞摘出術,およびSistrunk手術を行った.
    病理組織学的所見では囊胞から舌骨正中に至る索状の結合組織と,結合組織の中に導管を認めた.導管は途中で,萎縮し閉塞した部分が介在していたが,舌骨正中の甲状舌管に連続していた.
    以上より本症例は,甲状舌管へ導管でつながっていたと考えられる異所性粘液囊胞と診断した.
    本症例は正中頸囊胞の再発原因の一つを理解する上で,貴重な1 例と考えられた.
  • 新海 信雄, 西中 一幸, 舛森 直哉, 塚本 泰司
    2013 年 49 巻 4 号 p. 925-928
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2013/06/20
    ジャーナル フリー
    症例は13 歳男児である.2010 年5 月,学校検尿にて顕微鏡的血尿を認め,他医にて施行された超音波検査で左腎囊胞を指摘された.同年7 月中旬より肉眼的血尿,左側腹部痛,39 度台の発熱を認め,CT にて左腎感染性腎囊胞と診断された.抗菌薬投与により3 日間で臨床症状および炎症反応は軽快した.膿尿は消失したが,顕微鏡的血尿は持続していた.感染治療2 か月後にCT 撮影したところ,腫瘤径は診断時から約20 mm の縮小を認めた.しかし内部に造影される薄い隔壁を伴う35 mm 大の囊胞性腫瘤が残存しており,感染を併発した腫瘍性病変が疑われた.腎癌を含め悪性腫瘍を除外できなかったため,同年10 月中旬に腹腔鏡下根治的左腎摘除術を施行し,組織学的に腎細胞癌と診断された.尿路感染症の診療の際に,画像所見で腫瘤性病変の存在が疑われる場合には,感染症軽快後も腫瘤性病変を注意深く観察する必要があると考えられた.
  • 鈴木 久美子, 片山 哲夫, 岩間 英明, 中條 悟
    2013 年 49 巻 4 号 p. 929-933
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2013/06/20
    ジャーナル フリー
    盲腸軸捻転症の小児の1 例を経験した.症例は9 歳男児で,腹痛・嘔吐を主訴に受診.腹部単純X 線検査,腹部CT 検査より鏡面像を伴う巨大に拡張した腸管とwhirl sign を認め,小腸軸捻転疑いで緊急開腹術を施行した.開腹所見は,回盲部が720 度時計回りに捻転し,壊死しており,回盲部切除を施行した.上行結腸間膜が後腹膜に固定されておらず,移動性盲腸と判断した.後方視的に画像を検討すると,腹部単純X 線では左側に大腸の拡張像,右側に小腸の拡張像が見られ,盲腸軸捻転症に典型的な所見であった.盲腸軸捻転症は小児では特に稀な疾患であるが,腸閉塞の原因の鑑別として念頭に置くべきである.
  • 牟田 裕紀, 植村 貞繁, 吉田 篤史, 山本 真弓, 久山 寿子
    2013 年 49 巻 4 号 p. 934-938
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2013/06/20
    ジャーナル フリー
    Low-grade fibromyxoid sarcoma(以下LGFMS)は,稀な深部軟部組織腫瘍であり,緩徐に増大する悪性軟部腫瘍である.今回,恥骨上部皮下LGFMS の1 例を経験したので報告する.症例は3 歳,男児.3 歳時健診で恥骨上部に腫瘤を指摘された.超音波検査で恥骨上部類皮囊腫を疑い,腫瘍単純切除術を施行した.腫瘍は周囲との癒着は無く,容易に切除可能であった.病理学検査では,LGFMS と診断された.文献的に断端陰性の確認もしくは追加広範囲切除を行った症例で,単純切除症例よりも有意に局所再発率,転移率,腫瘍死率の改善を認めたとの報告がある.そのため,初回手術後2 か月に前回切除断端より1 cm の安全域を確保し追加切除を行った.追加切除検体中に一部腫瘍の残存を認めたが,切除断端に腫瘍は認めなかった.再手術後1 年間経過しているが,これまでに腫瘍の再発は認めていない.LGFMS は稀であるが,軟部腫瘍の鑑別診断として考慮すべきであり,またその再発までの期間は長期にわたる経過観察が必要である.
  • 鈴木 信, 青木 真理子, 五十嵐 昭宏, 畑中 政博, 藤野 順子, 田原 和典, 石丸 由紀, 黒岩 実, 鈴木 則夫, 池田 均
    2013 年 49 巻 4 号 p. 939-947
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2013/06/20
    ジャーナル フリー
    アルカリ誤飲による腐食性食道炎後の瘢痕性食道狭窄に対し,食道切除および有茎空腸間置による食道再建術を施行した.症例は4 歳と1 歳6 か月の幼児で,いずれも保存的な食道拡張術が無効と判断し,それぞれ受傷後6 か月,11 か月で食道再建術を施行した.術後は2 例ともに頸部食道と間置空腸の吻合部狭窄のためバルーン拡張術を必要としたが,それぞれ術後3 か月,5 か月目に普通食の摂取が可能となり,以後,経過は良好である.
    腐食性食道炎による瘢痕性食道狭窄に対する有茎空腸間置食道再建術は安全に実施可能で,かつ良好な蠕動とそれに伴う食物輸送能を維持した再建術式である.本術式の施行に際しては,術前の諸検査による最適な吻合部位の判断,間置空腸脚の血管茎の十分な確保,術後吻合部狭窄を認めた際の適切な処置などが特に重要と思われた.
  • 齋藤 敬弘, 伊勢 一哉, 山下 方俊, 川原 義典, 星野 豊, 後藤 満一
    2013 年 49 巻 4 号 p. 948-953
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2013/06/20
    ジャーナル フリー
    腹部腫瘤で発見された,新生児期発症の虫垂炎の1 例を経験した.症例は日齢22 の男児.発熱と嘔吐,腹部の膨隆にて発症.感染性腸炎の診断にて抗生物質を投与されたが,症状は軽快せず.腹部骨盤CT 検査にて腸管拡張および回盲部に腫瘤像を認めた.重複腸管による腸閉塞を疑い,日齢36,開腹手術を施行した.腹腔内を検索すると,回盲部周囲に膿瘍を認めた.穿孔性虫垂炎を疑い虫垂を検索するも,虫垂は溶解し確認できなかった.虫垂根部と思われる部位の盲腸壁を縫合し,ドレーンを挿入し閉腹した.術後経過は良好で術後14 日目に退院した.新生児に虫垂炎が発症することは極めて稀である.本邦では,われわれの報告も含め41 例の報告があるにすぎない.新生児では,虫垂炎に典型的な所見,検査成績を示さず,術前診断はきわめて困難であるが,新生児期にも虫垂炎が起こりうることを留意し,期を逃すことなく外科的治療に踏み切る必要があると思われた.
  • 河崎 正裕, 金川 勉
    2013 年 49 巻 4 号 p. 954-958
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2013/06/20
    ジャーナル フリー
    門脈圧亢進症による小腸出血に対して薬物療法が奏功した1 例を報告する.症例は胆道閉鎖症(IIIb1ν)のため肝門空腸吻合を施行し順調に経過していたが,1 歳10 か月から下血を短期間に繰り返すようになった.上部消化管内視鏡検査,出血シンチで出血病変を検索したが発見できず,門脈造影CT 検査で空腸吻合部に限局性の腸間膜静脈のうっ血像を認めた.出血部位の診断と同部の腸切除を目的に開腹したが,出血点は認めず腸管壁の血管拡張は広範囲にわたるため腸切除は施行しなかった.術後,スピロノラクトンとプロプラノロールを投与し以後2 年間下血を認めていない.門脈圧亢進症による小腸出血は比較的まれで臨床像も様々で診断,治療も確立したものはない.本例では薬物療法のみで長期に出血を防止できており小腸出血例では外科治療前に内科療法を試みる価値は十分あると考えた.
地方会
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あとがき
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