抄録
症例は女児.脳室内出血後水頭症に対し生後11 か月に脳室腹腔シャント(VPS)術が施行された.2 歳時に肛門からチューブが脱出したため受診した.発熱はなく,腹部は平坦で圧痛を認めず,血液生化学検査上も急性炎症の所見は認めなかったが,腹部単純レントゲン写真でVPS チューブが肛門に向かい脱出しているのが確認された.VPS チューブによる消化管穿孔(本症)と診断,消化管穿孔部の処置と外シャント化が必要と判断した.まず腹腔内を腹腔鏡で観察すると,VPS チューブはS 状結腸に穿孔していたが,チューブは線維性被膜に包まれ,腹腔内に便漏出を認めなかった.右前胸部を切開して皮下のシャントチューブを露出・切断してチューブ末梢側を肛門から抜去し,線維性被膜の結腸移行部を結紮した.術後,早期より経口摂取が開始でき,腹腔内合併症は認めなかった.本症に対し,腹腔内の便漏出の有無の確認と穿孔部処置が確実に行える点で腹腔鏡下処置は有用であった.