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石田 和夫, 中原 さおり, 武山 絵里子, 川上 義
2014 年 50 巻 2 号 p.
201-205
発行日: 2014/04/20
公開日: 2014/04/20
ジャーナル
フリー
【目的】先天性十二指腸閉鎖・狭窄症の診断・治療に関しては,ほぼ確立されているが,他の腸閉鎖症に比し多くの合併奇形,特殊病型例があり,治療上留意すべき点が存在する.自験例を提示し検討を行った.
【方法】1976 年から2010 年に,日本赤十字社医療センターにおいて手術を行った先天性十二指腸閉鎖/狭窄症79 例を対象とした.病型,合併奇形,術式,合併症,予後について検討を行った.
【結果】病型はtype 1 閉鎖39 例,type 2 索状閉鎖2 例,type 3 離断型閉鎖13 例,狭窄例は25例であった.輪状膵合併15 例,多発閉鎖2 例,閉鎖部位では乳頭下22 例,乳頭上33 例,不明24 例である.特殊病型例として,閉塞部を挟んだ胆管のY 字開口1 例,apple-peel 型閉鎖2 例,多発閉鎖2 例,alveolar capillary dysplasia(以下ACD)合併1 例を経験した.Down 症の合併は34 例(42.5%).何らかの合併奇形は45 例(57%)と極めて多い.心奇形の合併が27 例(34%)と多く,予後を左右している.予後は12/79(15%)の死亡率であり,多くは心奇形を合併していた.重症の心奇形を伴うapple-peel 型閉鎖の1 例は小腸の壊死にて失った.
【結論】本症は合併奇形や特殊閉鎖例がなければ,治療法や予後については問題ない疾患である.しかしながら,当院で経験した閉塞部を挟んだY 字開口例,apple-peel 型閉鎖例,多発閉鎖例,胆道系の先天異常の合併例,十二指腸前門脈例,内臓逆位合併例,ACD 合併例など特殊な病型・合併症が稀ながら存在することから,手術時の注意,術後の経過観察が必要である.
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北河 徳彦, 新開 真人, 武 浩志, 望月 響子, 浅野 史雄, 臼井 秀仁, 宮城 久之, 野澤 久美子, 田中 水緒, 田中 祐吉
2014 年 50 巻 2 号 p.
206-210
発行日: 2014/04/20
公開日: 2014/04/20
ジャーナル
フリー
【目的】肝芽腫の転移・原発巣手術中に,病変を発見する方法としてICG 蛍光法(以下本法)を利用したナビゲーション手術を行った.その有用性を検討し,報告する.
【方法】7 例を対象とした.内訳は多発肺転移に対する開胸肺部分切除術1 例,縦隔リンパ節転移に対する開胸リンパ節摘出術1 例,肝原発・再発巣に対する肝切除術4 例,肝再発巣に対する肝移植術1 例.全例に手術24 時間前にICG 0.5 mg/kg を静注した.病変部に集積し,赤外線により励起されたICG から放射された蛍光をPhotodynamic Eye(PDE)
® で撮影し,切除範囲の決定などに利用した.
【結果】肺転移では合計8 個の病巣を本法により同定,摘出した.最小の病巣は非触知の直径0.4 mm であった.縦隔リンパ節転移では,集簇したリンパ節群から転移した病巣を本法により1 個同定,摘出した.肝原発巣では肝表面に露出している腫瘍は蛍光を発したが,深部の病変は描出されなかった.肝切離面では,残肝に残存した腫瘍がないことを本法で確認し,摘出後の組織学的検査で断端部に腫瘍は認めなかった.胆囊,肝外胆管は良く描出され,ICG を非放射性の造影剤として胆汁漏の有無の判定に用い,術後胆汁漏は認めなかった.
【結論】本法は,肺転移巣やリンパ節転移巣の手術においては病変の発見に極めて有用であり,肝原発巣の手術においては切離面の決定,残存病変の有無の判定,胆汁漏の判定に有用である.
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―腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術導入後の問題点―
大野 耕一, 中村 哲郎, 中岡 達雄, 高間 勇一, 東尾 篤史, 三藤 賢志
2014 年 50 巻 2 号 p.
211-216
発行日: 2014/04/20
公開日: 2014/04/20
ジャーナル
フリー
【目的】鼠径ヘルニアに対する鼠径管アプローチによる修復術(従来法)を習得するために必要な手術執刀数を求めるため,研修医が行った従来法の手術時間を検討した.さらに腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(LPEC 法)導入後の研修医の習熟度を評価した.
【方法】LPEC 法導入前に当科で修練した3 名の研修医(A,B,C)が執刀した男児の片側従来法の手術時間を20 例毎に区切り経時的に比較した.次にLPEC 法導入後に修練した2 名の研修医(D,E)の手術時間と比較した.
【結果】研修医A,B,C は3 年間で127,124,131 例の従来法を執刀し,61 から80 例目の手術時間は41 から60 例目に比べて有意に短縮し(A:41±10 から35±6,B:33±11 から27±7,C:40±15 から32±10 分;p<0.05),81 例目以降は有意差がなかった.また80 例を執刀するために各々21,25,19 か月を要し,除外例を含めてこの間に執刀した男児の全従来法は各々93,104,92 例であった.一方,研修医D,E は24 か月間に34,30 例しか従来法を執刀しておらず,手術時間は経時的に短縮していなかった.また最後の20 例の手術時間は各々40±11 と39±14分であり,研修医A,B,C の61 から80 例目の手術時間より長かった.
【結論】従来法を習得するには男児の鼠径ヘルニア修復術を約100 例執刀する必要があると考えられた.LPEC 法導入後は従来法を執刀する機会が激減し,十分な修練を積むことができなかった.従来法は小児外科医にとって習得すべき基本的手術であり,修練の機会を確保する必要がある.
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江角 元史郎, 高橋 由紀子, 福田 篤久, 生野 猛
2014 年 50 巻 2 号 p.
217-222
発行日: 2014/04/20
公開日: 2014/04/20
ジャーナル
フリー
症例は5 歳の男児.夜間,血性嘔吐と発熱があり前医に入院し,翌朝の腹部CT にてfree air を認め当科に緊急搬送された.来院時の体温は38.4°C.腹部は軽度膨満し,上腹部を中心に圧痛があった.CT 所見では上腹部にfree air と少量の腹水を認め,穿孔部は上部消化管であると推測された.全身状態も安定していたことから保存的に治癒しうると判断し,絶食,輸液管理で,抗生剤,抗潰瘍薬の投与を継続した結果,治療開始後24 時間で解熱し腹部所見も軽快した.入院6 日目の上部消化管内視鏡検査にて十二指腸球部に潰瘍を認めたが穿孔は閉鎖していたため,翌日から経口摂取を再開し,入院12 日目に退院とした.退院後6 か月で抗潰瘍薬の内服を終了したが,1 年後の内視鏡検査で潰瘍は完全に治癒しており,以後3 年経過するも再発は認めていない.小児十二指腸潰瘍穿孔例に対する保存的治療の報告は多くないが,条件を満たす症例であれば成人同様,有効な治療選択肢であると考えられる.
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薄井 佳子, 前田 貢作, 小野 滋, 栁澤 智彦, 馬場 勝尚, 辻 由貴
2014 年 50 巻 2 号 p.
223-225
発行日: 2014/04/20
公開日: 2014/04/20
ジャーナル
フリー
小児メッケル憩室の診断にダブルバルーン小腸内視鏡(double-balloon enteroscopy: DBE)が有用であった2 症例を経験したので報告する.症例1 は8 歳男児.心疾患を背景とした慢性貧血の経過中,倦怠感と黒色便が出現してヘモグロビン値が4.5 g/dl まで低下した.出血シンチグラフィ陽性で,上・下部内視鏡検査を施行されたが出血源不明であり,当院紹介となった.症例2 は12 歳男児.貧血進行を伴う大量下血を認め,輸血施行後に当院へ緊急搬送された.いずれの症例も前医のメッケルシンチグラフィは陰性であったが,DBE にて非観血的にメッケル憩室を診断,小切開手術で憩室を切除した.小児においても出血源が不明な小腸病変に対してDBE によりメッケル憩室を確定診断する事が可能であり,適切な治療に繋がるものと考えられた.
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山田 和歌, 渡邉 稔彦, 田中 秀明, 佐藤 かおり, 大野 通暢, 高橋 正貴, 山田 耕嗣, 石濱 秀雄, 渕本 康史, 金森 豊
2014 年 50 巻 2 号 p.
226-229
発行日: 2014/04/20
公開日: 2014/04/20
ジャーナル
フリー
乳幼児の十二指腸潰瘍はまれであるが,急性胃腸炎に続発する十二指腸潰瘍の穿孔や出血の報告がこれまでも散見される.今回,嘔吐・下痢などの急性胃腸炎症状に続発した十二指腸潰瘍穿孔の3 幼児例を経験した.症例は1 歳・女児,2 歳・男児,2 歳・女児である.2 例は便中ロタウイルス抗原が陽性であり,1 例は胃腸炎の原因ははっきりしなかったが,症状,時期よりウイルス性胃腸炎が考えられた.3 例とも十二指腸球部に穿孔を認めた.1 歳の症例は術前から肝機能異常を認め,画像所見,術中肉眼所見でも肝臓の脂肪性変化を認めた.術後も覚醒遅延や肝機能障害がみられた.3 例とも潰瘍の再発はみられていない.急性胃腸炎は日常よくみかける内科疾患であるが,幼少時の場合,全身状態の急変時には消化管潰瘍穿孔など外科疾患の合併も考慮しなければならない.
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石井 智浩, 森田 圭一, 津川 二郎, 佐藤 志以樹
2014 年 50 巻 2 号 p.
230-234
発行日: 2014/04/20
公開日: 2014/04/20
ジャーナル
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症例は女児.脳室内出血後水頭症に対し生後11 か月に脳室腹腔シャント(VPS)術が施行された.2 歳時に肛門からチューブが脱出したため受診した.発熱はなく,腹部は平坦で圧痛を認めず,血液生化学検査上も急性炎症の所見は認めなかったが,腹部単純レントゲン写真でVPS チューブが肛門に向かい脱出しているのが確認された.VPS チューブによる消化管穿孔(本症)と診断,消化管穿孔部の処置と外シャント化が必要と判断した.まず腹腔内を腹腔鏡で観察すると,VPS チューブはS 状結腸に穿孔していたが,チューブは線維性被膜に包まれ,腹腔内に便漏出を認めなかった.右前胸部を切開して皮下のシャントチューブを露出・切断してチューブ末梢側を肛門から抜去し,線維性被膜の結腸移行部を結紮した.術後,早期より経口摂取が開始でき,腹腔内合併症は認めなかった.本症に対し,腹腔内の便漏出の有無の確認と穿孔部処置が確実に行える点で腹腔鏡下処置は有用であった.
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佐藤 かおり, 山田 和歌, 渡邉 稔彦, 大野 通暢, 金子 幸裕, 阿知波 郁也, 松岡 健太郎, 渕本 康史, 金森 豊
2014 年 50 巻 2 号 p.
235-240
発行日: 2014/04/20
公開日: 2014/04/20
ジャーナル
フリー
症例は14 歳女児.左肩痛と呼吸苦で近医を受診した.胸部レントゲン写真にて心陰影の拡大を認め心タンポナーデと診断された.胸部CT 検査などの精査にて縦隔奇形腫の心囊穿破と考えられ,発症後38 日目に当科にて腫瘍摘出術を行った.術中所見では穿破部位は明らかでなかったが心囊内容は腫瘍内容と同様であり,縦隔奇形腫の心囊穿破と診断した.腫瘍全摘の後に収縮性心外膜炎予防のため心囊膜を合併切除した.術後経過は良好で術後15 か月が経過したが腫瘍の再発などは認めていない.
縦隔の成熟奇形腫は2 歳以下では腫瘍圧迫による咳嗽や呼吸苦といった呼吸器症状を呈して発症することが多い.しかし,それ以降では無症状で偶然見つかる場合が半数以上といわれている.心タンポナーデで発症した報告は検索できる限りでは自験例を含めて22 例とまれであり,文献的考察を含めて報告する.
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畑田 智子, 高見澤 滋, 好沢 克, 町田 水穂, 岩出 珠幾, 田中 孝明, 山田 豊, 吉澤 一貴
2014 年 50 巻 2 号 p.
241-244
発行日: 2014/04/20
公開日: 2014/04/20
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フリー
症例は日齢0 の男児.臍帯ヘルニアの出生前診断で在胎週数37 週6 日,2,724 g,帝王切開で出生,アプガースコアは8/9 であった.ヘルニア囊の破裂はなく,ヘルニア門の外径は3 cm,臍帯内ヘルニアの診断で日齢0 に手術を施行した.臍帯内ヘルニア以外の合併奇形は認められなかった.全身麻酔下に脱出臓器を用手的に腹腔内へ還納し腹膜および筋膜を結節縫合で閉鎖した.バイタルが安定していたことから臍形成術を行った.ヘルニア周囲の皮膚で底孤長15 mm,高さ15 mm の三角形の皮弁を3 枚作成し,臍輪を縫縮するように3 枚の皮弁を縫合し臍を形成した.日齢3 から経口摂取を開始し日齢12 に退院となった.術後1 年を経過した現在,臍は陥凹し整容性は良好である.臍帯ヘルニアの手術では,脱出臓器の腹腔内還納,腹壁閉鎖が最優先され臍形成に注意が払われることは少ないが,臍形成を同時に行うことを念頭に置いて腹壁閉鎖術を行うことは有用であると考えられた.
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松浦 玄, 岩井 潤, 東本 恭幸, 四本 克己
2014 年 50 巻 2 号 p.
245-250
発行日: 2014/04/20
公開日: 2014/04/20
ジャーナル
フリー
腸管囊腫様気腫症(pneumatosis cystoides intestinalis,以下本症)は腸管壁内に気腫病変を生じる病態であるが若年者の報告例は少ない.今回,白血病治療中に生じた本症の1 例を経験したので報告した.症例は16 歳男性.12 歳時に発症した急性リンパ性白血病に対し当院血液・腫瘍科にて骨髄移植2 回を含めた化学療法を施行中であり,移植片対宿主病のためプレドニゾロン,タクロリムスの投与を継続していた.腹部膨満を認め,腹部X 線検査にて腹腔内遊離ガス像を疑われ当科に紹介された.腹部X 線,CT で上行結腸からS 状結腸にいたる腸管壁の気腫状の病変を認めたため本症と診断した.高流量酸素持続吸入による治療を開始したところ腹部膨満とX 線所見は1 週間で改善し,再発なく経過した.本症の0 ~18 歳の本邦報告62 例の初発症状,基礎疾患,治療法について検討し,治療方針について考察した.本症では保存的な治療で軽快することが多く,正確な診断と過剰治療に対する注意が必要である.
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堀池 正樹, 中岡 達雄, 中村 哲郎, 大野 耕一, 高間 勇一, 銭谷 昌弘, 東尾 篤史
2014 年 50 巻 2 号 p.
251-256
発行日: 2014/04/20
公開日: 2014/04/20
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盲腸軸捻転症は放置すると盲腸壊死に陥る緊急性の高い疾患であり小児では稀である.症例は8 歳男児.腹痛,嘔吐を主訴に来院,腹部立位単純レントゲンで左上腹部に胃泡と一部重なる巨大なniveau 像を認めた.右上腹部には多数の小腸ガス像を認めた.単純イレウスと診断し入院の上保存的加療開始した.しかし入院翌日には腹部緊満,広範囲の腹膜刺激症状が出現した.入院時の画像所見を再検討すると盲腸軸捻転症であることが判明し,緊急で捻転解除術を施行した.術後一旦敗血症性ショックに陥ったがその後軽快し退院となった.本症は重症心身障害児の占める割合が高く腹部症状が乏しいため診断が遅れやすい.腹部単純レントゲン検査のみで診断しうる特徴的画像所見の熟知こそが重要であり,その上で慎重な対応をしていく必要があると思われた.
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星 玲奈, 杉藤 公信, 渡邉 揚介, 吉澤 信輔, 植草 省太, 川島 弘之, 後藤 俊平, 大橋 研介, 池田 太郎, 越永 従道
2014 年 50 巻 2 号 p.
257-262
発行日: 2014/04/20
公開日: 2014/04/20
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症例は5 歳の男児と2 歳の女児,肝芽腫のpre-treatment extent of disease(PRETEXT)III.治療抵抗性を示し,肝動脈化学塞栓療法(transcatheter arterial chemoembolization;TACE)後に肝切除術を施行した.病理組織所見では,リピオドールで塞栓された腫瘍辺縁部の血管周囲が広く壊死組織に置換されていた.2 例とも治療終了後に異時性肺転移を認めた.Vascular endothelial growth factor(VEGF),matrix metalloproteinases(MMP)2,MMP9 は,血管新生や局所進展,遠隔転移に関与している.腫瘍検体を用いた遺伝子発現解析では,いずれも腫瘍生検時と比較し肝切除時において低下していた.
TACE の遠隔転移に対する影響は議論が残るが,TACE により血管新生や局所進展の抑制が期待できると示唆された.
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金 聖和, 文野 誠久, 樋口 恒司, 青井 重善, 古川 泰三, 木村 修, 田尻 達郎
2014 年 50 巻 2 号 p.
263-266
発行日: 2014/04/20
公開日: 2014/04/20
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今回我々は,感染による初発後の経過観察中に小腸捻転を併発した腸間膜リンパ管腫の2 例を経験したので報告する.症例1 は4 歳3 か月男児.腹膜炎症状で発症し,感染性腹腔内リンパ管腫と診断され,抗生剤治療が行われた.症状が軽快したため経過観察としたが,その4 か月後に小腸捻転に伴う絞扼性イレウスを発症した.緊急開腹術を施行し,回腸合併切除で病変を全摘した.症例2 は3 歳7 か月女児.感染で発症し前医で保存的に加療され,症状が消失した後に当科紹介となった.その2 か月後の手術待機中に小腸捻転を併発し,緊急開腹術を行い,囊胞周囲の空腸を一塊として全摘した.腸間膜リンパ管腫は,捻転のリスクがあり,特に感染などの急性腹症発症例では診断後に可及的早期の外科的治療を予定する必要があると考えられた.
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小林 めぐみ, 水野 大, 吉田 宗平, 佐々木 秀策, 有末 篤弘, 若林 剛
2014 年 50 巻 2 号 p.
267-272
発行日: 2014/04/20
公開日: 2014/04/20
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開腹手術を要した菓子昆布による食餌性イレウスの2 小児例を経験したので報告する.〈症例1〉1 歳11 か月女児.嘔吐と腹痛のため来院.身体所見で脱水を認め,腹部CT で腹水の貯留と広範な小腸の拡張からイレウスと診断した.保存的治療を行うも腹部症状の改善がみられず,開腹手術を行った.手術では広範な小腸の拡張の先端部に鶏卵大の内容物を認め,小切開にて昆布塊を回収した.〈症例2〉14 歳女児.嘔吐と腹痛のため来院.腹部CT でbubbly mass and impaction, small bowel feces sign を認めた.腹膜刺激症状を伴い,絞扼の危険性も危惧されたため緊急手術を行った.手術では回腸末端までの腸管拡張とメッケル憩室を認めた.憩室を切除する際に内容物である昆布を大量に回収した.2 例とも発症前に菓子昆布を食べたことが確認された.食餌性イレウスは,頻度が低いものの小児外科医が周知しておくべき疾患である.
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