日本小児外科学会雑誌
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原著
重症心身障がい児(者)における腹腔鏡下噴門形成術周術期の感染症リスクファクターの検討
小西 健一郎古村 眞森田 香織魚谷 千都絵石丸 哲也川嶋 寛杉山 正彦岩中 督
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2015 年 51 巻 5 号 p. 889-894

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抄録

【目的】重症心身障がい児(者)に対する腹腔鏡下噴門形成術後に重症感染を合併することが報告されている.安全に周術期管理を行うために,重症心身障がい児(者)における周術期感染症のリスクファクターを明らかにすることを本研究の目的とした.
【方法】2006 年6 月~2011 年12 月までに当科で腹腔鏡下噴門形成術を施行した重症心身障がい児(者)53 例を対象とした.原疾患は重症新生児仮死・染色体異常・難治性てんかんなどであった.周術期感染症の有無とそのリスクファクター(術前の保菌状態,栄養状態,年齢,側彎の程度,気道処置の有無,手術時間)について後方視的に検討し,単変量解析・多変量解析を行った.
【結果】周術期感染症は53 例中13 症例(24.5%)で経験された.内訳は,創部感染症4 例,肺炎2 例,尿路感染症2 例,腸炎1 例,カテーテル感染症1 例,末梢点滴刺入部の蜂窩織炎1 例,中耳炎1 例,感染源不明1 例であった.単変量解析では,弱毒菌の常在,乳幼児,身長体重比低値,気道処置されていないことが危険因子として示唆されたため,これらに対して多変量解析を行ったところ,弱毒菌の常在(p=0.02)と気道処置されていないこと(p=0.04)が,独立したリスクファクターであることを確認した.
【結論】周術期感染症のリスクファクターは,弱毒菌の保菌と気管切開や喉頭気管分離の気道処置がなされていないことである.これらリスクファクターを有する患児の周術期管理には十分注意する必要がある.

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