2016 年 52 巻 4 号 p. 949-953
症例は2 歳4 か月男児.突然の腹痛を主訴に当院に救急搬送された.腹部CT 検査にて多発巨大肝腫瘍と腹腔内出血を認め,腫瘍栓は両葉の肝内門脈を占拠し本幹まで進展していた.生検による病理学的診断および画像検査にて低分化型肝芽腫PRETEXT IV と診断した.CITA 療法を2 コース施行後にITEC 療法を1 コース施行したが門脈腫瘍栓は改善せず,切除不能肝芽腫と診断した.CDDP 療法を1 コース追加後に生体肝移植を施行した.手術所見では左右門脈枝に腫瘍が充満し本幹への浸潤も認められたが,術中迅速病理学検査で切除断端が陰性であることを確認し完全切除し得た.術後補助化学療法としてCPT-11 療法を4 コース施行し,術後5 年10 か月の現在再発なく生存中である.血管浸潤を伴う切除不能肝芽腫に対するプライマリー肝移植の予後は不良との報告があるが,腫瘍浸潤血管を合併切除して十分なサージカルマージンをとることで良好な結果を得られた.