2016 年 52 巻 5 号 p. 1067-1072
症例は9 歳女児,当院受診5 か月前より貧血を認めており経過観察されていた.腹痛と倦怠感が出現し,血液検査上の著明な貧血を認めたため,当院に紹介入院加療となった.精査の結果,胃角部後壁の粘膜下腫瘍(GIST)が疑われた.腹腔鏡・内視鏡合同胃局所切除術(laparoscopic and endoscopic cooperative surgery: LECS)を第24 病日に試みたが,術中の内視鏡所見で腫瘍頂部に潰瘍が残存していたため,腫瘍の腹腔内散布を回避するために創外での胃局所切除術を施行した.術後経過は良好であり,9 日目に退院した.病理および遺伝子検査の結果,高リスクの胃GIST と診断したが,c-kit(exon 9, 11, 13, 17),PDGFRA(exon 12, 14, 18),BRAF(exon 15)の遺伝子変異なく,SDHB 免疫染色も陰性であることから術後補助化学療法は行わない方針とした.術後25 か月無再発にて経過している.